40本の壁を打破する秘訣(ひけつ)は高めの攻略にあった。巨人岡本和真内野手(24)が、西武中村剛也内野手(37)と都内で4年連続の合同トレを行った。「おかわり塾」入塾3年で本塁打王と打点王の2冠を獲得し、迎えた4年目は「高めの打ち方」に重点を置き、打撃論を吸収した。新たな引き出しが加わったセ界のアーチストは、中村が09年と11年に記録した48発超えを来季の目標にかかげた。【取材・構成=栗田成芳、久保賢吾、久永壮真】

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温めていた質問を真っすぐにぶつけた。岡本はウオーミングアップを終え、すぐさまバットを握ると「高めってどうやって打ってますか? 」と中村に尋ねた。年に1度の特別セミナーを前に、前夜のうちにカーナビを球場にセット。頭の中では「師匠」に聞くべきことを決めていた。中村はバットを手に取るとゆっくりと高めのスイングを披露した。

中村 バットを出すじゃん。そこから無理に振り上げるのは一番高めを打ちにいってだめなパターン。ステップは小さく、そのまま、こう。

バットをかぶせることなくそのままの軌道で振り抜き、ローフィニッシュ気味に抜いた。

中村が10月24日のソフトバンク戦で、岩崎の高めの148キロ直球を仕留めた1発こそお手本だった。スマートフォンの映像で見た岡本は、極意が何かを知りたかった。今季31本塁打のうち、高めは6本(真ん中15、低め10。本数は日刊スポーツ調べ)。決して苦手にしているわけではないが、高さ別では最少。中村は「やや外の高めが確率よく打てれば、40本打てるよ」。40発到達へ高めの攻略が鍵だった。

はち切れんばかりのウエアを身にまとった岡本が、スタンドティーに置かれたボールを打ち始めた。互いに口数は多いわけではない。イメージを頭に置き、黙々とバットを振った。ライナー性だった打球は、徐々に大きな弧を描くようになり、左翼フェンスに直撃。終盤には柵越えし、防護ネットにぶち当てると「あれ、去年より飛んでる」と自分でも驚いた。成長した姿を中村は「おれが岡本さんに教わる方がいいんじゃない? 」と言いながら、頼もしそうに見つめた。

高め攻略の糸口を見つけた岡本は、少しだけ「師匠」の背中が見えていた。練習後おそるおそる色紙の上でペンを走らせた。「中村さんの48発超え!!」。1度書き間違えたものの、力強くしたためた。初めて合同トレを行った3年前は0本塁打だった「弟子」の成長を知る中村は「打倒岡本さん」と書いた。ケガに苦しみ、7年ぶりに1桁本塁打に終わった今季からの巻き返しの起爆剤として、「愛弟子」をターゲットに置いた。セ・パを代表する希代のアーチスト2人が、互いに高め合い21年もアーチを量産する。

▽西武中村と巨人岡本の合同自主トレVTR 

◆17年 この年、0本塁打に終わった岡本に、中村は「適当論」を説いた。「片仮名で『テキトー』は雑に感じるが、漢字なら適する当たり。考えすぎもよくない」と本塁打量産の心構えを伝えた。 

◆18年 中村は史上最年少で「3割30本塁打100打点」を達成した岡本に「40本塁打への技術」を伝授した。岡本の球の捉える位置を「下だから滑って、打球がフワッと上がる。もう少し上。厚く」と指摘。左脇が締まり過ぎ、ヘッドの抜けが窮屈に見えると「左脇を開けて、フライングエルボー気味でもいい」とフォロースルーの意識を説いた。 

◆19年 中村は岡本の左翼方向への1発が少なかったことを指摘した。左方向の打球がフックしてファウルゾーンに切れていたため「インパクトの後、もう少し手首を返さないように意識してみたら」と「ピンポイント技術」を伝授した。