ソフトバンク担当記者が選ぶ今季のベストゲームの第3回は11月15日のロッテとのクライマックスシリーズ(CS)第2戦(ペイペイドーム)です。第1戦に先勝。日本シリーズ進出へ王手をかけた一戦で中村晃外野手(31)が2ラン2発を放って2戦連続の逆転勝ち。頼れる選手会長の「祝砲」には興奮させられた。
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ライナー性の弾道が右翼スタンドに突き刺さった。3点を追う2回裏だった。1死一塁から打席に入ったソフトバンク中村晃は迷いなく初球を振り切った。ロッテの先発チェン・ウェインの144キロの直球だった。1点差に詰め寄る反撃アーチ。第1戦では2番一塁で先発出場。この日は相手先発が左腕ということもあり、7番でのスタメン出場だった。中村晃にとっては1打席目の1球目。勝負強さを見せつける一撃だった。
「もう野球はできないかもしれません」。中村晃がそう言ったのは開幕前の5月。昨年から悩まされていた自律神経失調症に加え、両膝も痛めた。開幕は出遅れたが、何とか克服し7月に1軍合流するとシーズンは100試合に出場。選手会長としてプレーでも精神面でもチームをけん引した。寡黙な男の芯の強さを見せつけられたシーンだった。さらに4回に巡ってきた2打席目にも1死二塁から逆転2ランを右翼席に運んだ。シーズン6発しか放っていない。大舞台では予想外ともいえる力を発揮した。チームはCSを突破、巨人との日本シリーズでも2年連続で4連勝。パ・リーグ初のV4を達成した。柳田、千賀、栗原、周東…。今季、目覚ましい活躍をした選手は多いが、その中でも中村晃の存在はチームの「心棒」だったのではないだろうか。その象徴ともいえる2本塁打だった。
9月に川村隆史コンディショニング担当(享年55)が急逝。公私ともに信頼していた恩師との別れに、誰よりも悲願のリーグVと日本一を誓っていた。訃報を知らされた遠征先の札幌ドームで中村晃は泣き崩れた。そして悲しみを力に変えた。シリーズ進出を決め、珍しくガッツポーズを繰り返した姿はほほ笑ましく、頼もしかった。【佐竹英治】(おわり)



