昨秋のドラフト候補右腕、青森大の遠藤暉世己(きせき)投手(22=稚内大谷)が今春、社会人野球の強豪、日本製鉄室蘭シャークス入りする。187センチの長身を生かした投球で、昨年ドラフトは複数球団のリストに挙がりながら指名されなかった。最速147キロ腕が新天地で進化し、もう1度プロへの道を切り開く。

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何が足りなかったのかを真摯(しんし)に受け止め、新たな道へ進む。遠藤は3日から日本製鉄室蘭シャークスの練習に合流した。「ここで力をつけ北海道で応援してくれる人たちに恩返ししたい。チームに拾っていただいた。日本選手権、都市対抗出場に貢献したい」と前を向いた。

昨秋ドラフトで自身の名前が呼ばれることはなかった。高校時代に肩を痛め一度、投手をあきらめた。青森大で再挑戦し、2年秋に北東北大学リーグデビュー。複数のスカウトの視察を受けるようになり、3年秋にはリーグ制覇にも貢献した。「自信を持って投げられるようになり、プロになりたいと思うようになった」。昨秋もリーグ戦4勝0敗と結果を出し優秀選手に輝きプロ志望届を提出したが、夢はかなわなかった。

運命の日、同リーグで競い合った八戸学院大の大道温貴投手(22=春日部共栄)が広島3位指名を受けた。「球速も球威もマウンドさばきも全部、彼に負けていた。すべてにおいてレベルアップが必要と知った」。自身の投球を振り返り、現在は「打者により球威を感じさせたい」とリリースポイントを遅らせるためのフォーム研究に取り組んでいる。187センチの長身右腕は「自分の武器である角度と融合させることができれば、打者が嫌がるのでは」と“進化形”を思い描いている。

日本製鉄室蘭シャークスは19年に日本選手権、都市対抗とダブル全国切符獲得も、昨年は唯一の全国大会となった都市対抗の北海道2次予選で1勝2敗。4チーム中最下位に終わった。昨季限りで主戦だった元ソフトバンク鈴木駿也(30)が退部し、比嘉泰裕監督(35)は同じ右腕の先発候補、遠藤に「真っ直ぐが良く気持ちで押せる。その強みを生かしてほしい」と期待する。社会人で圧倒的結果を残し、文句なしで指名される投手へ、バージョンアップする。【永野高輔】

〇…昨秋、プロ志望届を提出した北海道関連の大学、高校生は道内外合わせ計22人で、日本ハム1位の苫小牧駒大・伊藤大海投手(23=駒大苫小牧)ら計8人がNPBから指名を受けた。独立リーグは、徳島に内定している北海学園大の波間空良内野手(22=札幌東陵)ら7人。愛媛に入る札幌大谷大の大山航平外野手(22=日本学園)は同大初の独立リーグ入り。社会人は、NTT東日本に入る国学院大の上出拓真(22=札幌第一)白樺学園の片山楽生(18)の両投手らがいる。

◆遠藤暉世己(えんどう・きせき)1998年(平10)9月6日、稚内市生まれ。稚内中央小4年から野球を始め稚内中、稚内大谷。稚内大谷では一塁手として2年夏の北北海道大会8強。2年秋まで投手兼務も3年春以降は右肩を痛め内野手専念。青森大では再び投手となり、北東北大学リーグで2年秋にデビュー。3年春に初勝利、秋は16季ぶりの優勝に貢献。昨秋は4勝0敗で優秀選手。大学通算24試合7勝1敗。家族は両親と姉2人。187センチ、87キロ。右投げ右打ち。