「ミスター開幕男」が、指揮官に記念の初勝利をプレゼントした。楽天涌井秀章投手(34)が、自身10度目の開幕投手で7回4安打無失点と好投。プロ野球史上3位タイの開幕戦6勝目を挙げた。初球先頭打者本塁打を放った辰己とはロッカーが隣で、試合前に「逆方向に打てば本塁打が出る」とアドバイス。言葉通りに実践した辰己とお立ち台に上がり、仙台のファンから歓声を浴びた。

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安定した投球と同様に、涌井はお立ち台でもファンを笑顔にさせた。インタビュアーから2問目の質問を受けた後、辰己との試合前のロッカールームでの衝撃的なトーク内容を明らかにした。

涌井 ロッカーが隣で「初球あっちに打てば、ホームランになるよ」と言って、本当に打っちゃった。それでちょっとメンタルやられて、慌ただしくなってしまった。

1回を3者凡退、わずか9球で片付けると淡々とベンチに戻った。数分後、耳に届いたのは大歓声だった。打った瞬間は「何してたかなぁ…。まさか本当に打つなんて思ってなかった」と暴露し、笑わせた。

マウンドでは、後輩投手へのメッセージを込めた。立ち上がりはテンポ良く流れを作り、ピンチでは打者を見ながら、丁寧な投球。「球を操れなかったですけど、唯一いい変化だった」と手応えを感じたシンカーを勝負球にゼロを7個並べ、自身10度目の開幕投手で史上3位タイの開幕6勝目を挙げた。

涌井 長いことやってれば、いくかなと。上の2人が気になる。(鈴木啓示、山田久志と聞き)すごい人たちの中に入れるのは、うれしいです。

19年オフにトレードで獲得し、西武時代からお世話になる石井GM兼監督に初勝利を贈った。「(9回を抑えた)牧田さんにボールをもらうのを忘れて…」と直接は渡せなくとも、思いは届いた。「恩はなかなか返しきれないと思いますけど、期待に応え続けていきたいです」。ワクの恩返しが、指揮官とチームを日本一へと導く。【久保賢吾】

▼涌井の開幕投手は西武時代に5度、ロッテ時代に4度あり、今回が10度目。開幕投手を10度以上は6人目で、3球団で務めたのは内藤(金鯱、朝日、広島)渡辺秀(巨人、日本ハム、大洋)に次いで3人目。涌井は西武時代に3勝、ロッテ時代に2勝しており、開幕投手の通算6勝は3位タイ。過去に2球団で開幕投手勝利は涌井を含め10人いたが、3球団で白星は初めてだ。

▽楽天石井GM兼監督(涌井から初勝利を贈られ)「こういうピッチングをしてくれると信じていましたし、ご飯も現役時代いっぱいごちそうしたので、しっかりやってくれた。ターゲットを絞った時、必ず彼はやってくれる」

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