プロの壁にぶつかった阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手(22)が悔しさを胸に、プロ2本目のアーチを描いた。6回に19打席ぶりとなる2号ソロ。新人選手の開幕2カード連続本塁打はドラフト制後、セ・リーグ初。開幕から相手投手の厳しい攻めに三振の山を築いているが、逆襲のひと振りとなった。

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バットを振らなければ何も始まらない。三振を重ねても佐藤輝は自分のフルスイングを貫いた。6回2死、広島中村祐の真ん中へのチェンジアップを逃さず、右翼席へ弾丸ライナーでたたき込んだ。「抜けてきたチェンジアップをしっかり仕留めることができた。思い切って振った結果、1本出てよかった」。この日もカメラに向かって笑顔で大好きなアイドル「ももいろクローバーZ」の「Zポーズ」を決めた。

「打てない悔しさを持っていました」と思いを隠さなかった。広島3連戦の1戦目、2戦目は3三振ずつ喫した。開幕2戦目ヤクルト戦の1打席目での初本塁打以降の18打席で17打数2安打。うち三振は「11」だった。この日の試合前には井上ヘッドコーチと10分ほど話し込んだ。井上ヘッドはレギュラーとしての心構えを伝え、好調時と不調時の違いをアドバイスした。

試合前の打撃練習では変化球も交え、直球でも変化球でも常に同じタイミングで球に合わせることを体に覚えさせている。佐藤輝は「細かい打撃フォームのことを井上ヘッドや北川さんにも言われて。ちょっと当たっていないので、アドバイスも参考にしながら、しっかり打撃フォームを見つめなおしたい」と、不振脱出へもがいている。

この日も2つ空振り三振し、6試合で13三振は12球団ワースト。振ることにためらいはないのかと問われると「それはあまりない」と答えた。井上ヘッドも「あれだけ振られたら相手も怖い。三振が多いのは、逆に言えばほかの人間が持っていない裏返し」と長所だと見ている。

新人選手の開幕2カード連続本塁打は、ドラフト制後では89年日本ハムの中島以来だ。セ・リーグでは初。2日からは地元関西に戻り、ホーム開幕となる中日3連戦(京セラドーム大阪)。開幕3カード連続ならば、球界初の快挙となる。チームの連敗も2で止まり、2位に浮上した。井上ヘッドは「ポーカーフェースだから、あいつは何を考えているのか分からない」と話す。試練に直面しても打撃スタイルや表情は崩さない。怪物スラッガーが逆襲の時を迎えた。【石橋隆雄】

▼ルーキー佐藤輝が6回に2号ソロ。佐藤輝は開幕カードのヤクルト戦(神宮)でプロ1号。阪神の打者が開幕から2カード連続本塁打は17年糸井以来。ドラフト制後に入団した新人は89年中島(日本ハム)以来2人目でセ・リーグの新人では初めてとなった。中島は本拠地の開幕カード、敵地の2カード目で1本ずつ打ったが、佐藤輝は2本とも敵地で記録した。

阪神矢野監督(2号ソロの佐藤輝に)「もちろん、こんなことの繰り返しだし、今日のホームランというのは何かのきっかけにしてくれたらなと思う。こういう風に(厳しく)攻められるんだっていうのが、この広島戦で初めて分かったようなね。ずっと俺が壁に当たったらいいのにっていうのが、もしかしたらこれが最初のそういうものかもしれん。でもこれはずっとくること」