阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(22)が公式戦で聖地デビューした。12年間過ごした甲東小、甲陵中、仁川学院は甲子園球場から直線距離でいずれも約5キロ圏。そんな地元の幼なじみで小、中学時のチームメート、長尾亮さん(22)が秘話を明かした。【取材・構成=中野椋】

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甲子園と同じ兵庫・西宮市の甲東園で2人は出会った。長尾さんは甲東小に2年時に転入し、甲東ブルーサンダースで佐藤輝とともに同チーム初の県大会出場。甲陵中軟式野球部で長尾さんは主将を務めた。計8年間の中で忘れられないのが、中学2年秋の新人戦だという。

初戦の先発オーダーに衝撃を受けた。「8番右翼 佐藤輝明」。小学6年でタイガースジュニアに選出され、地元では「甲東の佐藤」として知られた。右肘のけがで1年時は休部扱いだったが、まさかの下位打線。「けがもありましたけど、テルが“ライパチ”(ライトで8番打者)なんて考えたことなかったので。帰り道にみんなで、なんでやねんと(笑い)」。監督からは「1~4番までを2つ作りたい」と説明され、佐藤輝はもう1人の4番扱い。周囲はざわついたが「テルは文句とかは何も言わなかった」。いつも通り黙々と練習していたという。2回戦で佐藤直樹(19年ソフトバンク・ドラフト1位)を擁する報徳学園中に敗れたが、佐藤輝は右越えに特大二塁打を放った。3年最後の大会では周囲も納得の「4番捕手」。報徳学園中に勝利し、市内で準優勝した。

中学では最初からバリバリのレギュラーだったわけではなく、進学した仁川学院でも甲子園出場なし。近くて遠かった甲子園で、佐藤輝はプロ生活を歩む。当時を懐かしみ、長尾さんは「あの時からテルはテルのまんま。ちょっとしゃべるのがうまくなったな、くらいです。裏表なくテレビでも飾ったりしていない」と変わらない人柄を語った。「いい結果を残してくれたらみんなうれしいけど、とにかくけがなく頑張れ!」。“ライパチ”だった少年は、地元の仲間たちの思いも背負って戦っている。

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