侍の4番が、天敵からプロ初本塁打を放った。1点先取した初回の2死、広島の4番鈴木誠也外野手(26)が、巨人菅野智之投手(31)から左翼スタンドに3号ソロをたたき込んだ。昨季は対戦打率1割と、入団から長く苦しめられてきたエースに復帰戦勝利を許さなかった。先発の大瀬良大地投手(29)を援護し、連敗を2で止めた。

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鈴木誠が喜びをかみしめながら、ダイヤモンドを1周した。初回に1点を先制した直後、カウント1-1からの3球目、菅野の内角低め143キロカットボールをコンパクトに鋭く振り抜いた。打球はマツダスタジアム3階席に着弾。「当たればいいなという感じでした。あんまりいい感触ではなかったけど、なかなか打てる投手ではないのでよかった」と振り返った。

難敵菅野から待望の1発をぶちかました。昨季10打数1安打と完敗した右腕を、今季最初の対戦でリベンジ。代打で右前打を放った初対戦の14年9月16日から、65度目の対戦でついに初本塁打を記録した。しかし2、3打席は見逃し三振を食らっただけに「まだまだ本気で勝負されると手も足も出ない状態だった。菅野さんがギア入れたときにいい打撃ができれば」と力を込めた。

常に進化を求める。キャンプ中では左足を上げた際に極端に軸足に体重を残した新フォームに取り組んでいた。開幕直前に改良が加わり、軸足に体重を残しながらも、足を上げないフォームへと進化を遂げた。「体調も毎日違いますし、いろんなことをやりながら、その中で試合でもやっていかないといけない。その繰り返しがプロ野球のシーズンだと思う」と探求心が尽きることはない。

「動」への取り組みが功を奏した。昨季は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が不透明な中、ウエートトレーニングを重点的に行った。鍛え抜いた体を「思うように動かせなかった」という反省から、昨オフには鳥取・ワールドウィングで初動負荷トレを実施。1月の沖縄で行った自主トレでは、でんぐり返しなど器械体操の動きを取り入れたトレーニングを行うなどして、体の動きの部分を強化した。これまで積み上げてきた肉体の“エンジン”を自らコントロールするというのが、21年バージョンの「鈴木誠也」だ。

これで6試合連続安打を記録し、打率も3割4分9厘まで乗せた。前日8日ヤクルト戦で、今季1号を含む2発を放ち、2戦連発と主砲が波に乗ってきた。日本の主砲が、広島の4番にどっしりと構えている。【古財稜明】

◆鈴木誠対セ・リーグの主力投手 菅野(巨人)は苦手の相手で、試合前までの通算成績が打率2割1分3厘、0本塁打。30打席以上対戦した投手では最も低い打率だった。他のエース級投手との成績を見ると、大野雄(中日)や今永、浜口(DeNA)は3割超えの好相性。小川(ヤクルト)は2割5分9厘も、過去3年では3割4分6厘。西勇(阪神)も2割3分7厘だが、昨季は4割2分9厘と、近年は得意にしている。対戦65打席目で初本塁打した菅野は、今年から得意の相手にできるか。

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