相手先発は天敵の広島森下。誰もが1点の重みを理解していただけに、ドラフト6位中野拓夢内野手(24)は一塁ベース上で思わず破顔した。値千金の先制打。興奮のまま、仲間に向けて右拳を突き出した。

2回2死一、二塁、2ボール。「1打席に甘い球は1球来るか来ないか。ここは何としてもストライクを取りに来る」。高め151キロを右前に押し返し、貴重な1点をもぎ取った。

チームは森下に昨季から5度の対戦で4勝0敗を許し、抑え込まれていた。試合前時点で右腕の今季防御率は0・00。それでも臆することはなかった。「なんとしても自分が決めてやろう」。ルーキーならではの勢いでナインに「神話」を思い起こさせ、今季先制ゲーム12連勝に突っ走らせた。

2日前の12日、東北福祉大の5学年先輩にあたる松山英樹が日本人初のマスターズ制覇を達成。同大硬式野球部の米国キャンプ中にメンタルコントロールを教わったという大先輩の快挙に気合を入れ直していた。

「自分も頑張らないといけない。松山選手に続いて、自分が大学の名前を売っていけたら」

3試合連続スタメン出場で打席に立てば5戦連続安打。「積極的に振りにいけているというところが一番の好調の要因かと思います」。有言実行で“東北福祉大魂”を体現している。

この日は日大山形2年夏に全国ベスト4に進出した甲子園で初のお立ち台にも上がった。「新人の中野です。これからしっかりと名前と顔を覚えてもらえるように、もっと頑張りたいと思います」と声を張り上げた。

8回の遊撃守備では失策を喫したが、矢野監督の評価は高い。「速い球でも変化球でも対応力がある。打つ方の魅力は十分にある。守る方をどんどん伸ばしていってくれたら、もっともっと面白くなる」。打率4割7分6厘。レギュラー奪取へ、猛進中だ。【佐井陽介】

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