起爆剤だ。プロ初先発の広島中村奨成捕手(21)がプロ初安打を放った。本職の捕手ではなく、2番左翼で出場。

5回にプロ初安打となる二塁打を左翼に飛ばし、その後追加点のホームを踏んだ。2打数1安打2四球2得点。17年ドラフト1位が、試合前まで31イニング連続無得点と沈黙していた打線を活気づけた。チームは連敗を止め、再び貯金生活に入った。

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バンテリンドームの左翼スタンドが沸いた。広島ファンから左翼の守備に就く中村奨に大きな拍手が注がれた。通常、本塁打や適時打を打った選手に送られる拍手は、プロ4年目で初安打の祝福の拍手となった。メモリアルヒットは5回に生まれた。中日2番手鈴木のフルカウントから内寄りの直球に素早く体を回転させ、思い切り引っ張った。左翼への二塁打が、プロ7打席目での初安打となり、二塁ベース上では安堵(あんど)の表情を見せた。

「やっとプロとしての一歩が踏み出せたなかと思います。与えられたところで結果を残すしかない年齢になっている」

記念すべき初安打も危機感を口にした。プロ初スタメンは捕手ではなく、2番左翼だった。昨年のプロデビューから、まだ1軍で捕手としての出場はない。「捕手としてのプライドはある」と口にするが、それ以上に「どこであっても1軍で出たい」思いが強い。貪欲に1軍出場を求め、今年は2軍で外野だけでなく、三塁にも挑戦してきた。

巡ってきたチャンスを生かした。1点差に迫られた直後に出た5回の初安打が追加点の起点となっただけでなく、3回1死から選んだプロ初の四球も、鈴木誠の決勝3ランにつながった。プロ初スタメンで2打数1安打2四球2得点と、前日まで31イニング連続無得点だった打線を活性化させた。

敵地とはいえ、9061人の観衆も力になった。2軍公式戦は無観客。2軍で有観客となったマツダスタジアムでの2、3日のウエスタン・リーグのソフトバンク戦は「お客さんが入ると、全然モチベーションも違う」と、2戦連発。今年初の1軍の舞台でも、物おじすることなく躍動した。

記念球は支えてくれた母に届ける。「常に前を向いてやっていこうと、言ってもらえていた。それが支えになっていました」。多くの支えがあって生まれた1本だった。

中村奨や途中出場で2安打の羽月らの若い力と、本塁打の菊池涼や鈴木誠、そして会沢らの主力がかみ合って、連敗を止めた。エース大瀬良の離脱中は、みんなで支え合いながら戦っていく。【前原淳】

◆中村奨成(なかむら・しょうせい)1999年(平11)6月6日生まれ、広島県出身。広陵では1年春からベンチ入りし、3年夏の甲子園では、個人最多の6本塁打。17年ドラフト1位で広島入団。昨季1軍戦初出場を果たし、4試合に出場した。181センチ、81キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸は700万円。

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