マー君の凱旋(がいせん)マウンドを一振りで打ち砕いた。日本ハム中田翔内野手(31)が、決勝弾を含む2本塁打を放ち、楽天田中将大投手(32)のシーズン公式戦連勝を「28」で止めた。1回、開幕18試合目で飛び出した待望の今季1号は、左中間への先制2ラン。今年2月の練習試合でも田中将から1発を打っており、苦手意識のあった天敵退治で、チームとともに上昇気流に乗る。

    ◇    ◇    ◇

痛快に飛んでいく打球ともに、球場のボルテージは最高潮に達した。1回2死一塁。中田が一躍、主役の座を奪った。田中将の5球目。外角高め、球場表示は「154キロ」直球をバックスクリーン左に突き刺した。「気持ちで打ったので、あまりはっきり覚えていない」。ダイヤモンドを1周し、ベンチに腰掛けると、かみしめるように、うつむきがちに小さくほえた。

田中将との対戦に「ぶつかるだけ。小細工は通用しない」と挑んだ。結果を恐れずバットを振り抜き、開幕67打席目でシーズン1号の決勝弾を生み出した。開幕スタメンに名を連ねた10年以降では最遅で「今年はみんな一斉に、調子が悪い。こんなシーズンは僕自身、初めて」。それでも「本塁打どうこうよりも、久々にしっかりバットが振れたかな」と復調の兆しをつかんだ。

マー君との対決が呼び水となり、スラッガーの本能を取り戻した。「高校の時からズバ抜けた投手だった。イメージは変わらない」と敬意を払う好敵手から最高の結果を残し、感触がよみがえった。6回には「自分の中で、吹っ切れていた」と、牧田から2号ソロ。7回の守備ではファウルゾーンへの飛球を好捕するなど、攻守で躍動した。栗山監督は「翔の場合って優しさも、責任感もあるし、自分で自分を苦しめてしまうところがある。本当にいいホームランだった」とたたえた。

お立ち台では「いろいろあって、目が腫れていたんですけど」と自虐的に切り出した。7日に不振からベンチでバットを折り、その後に右目付近を負傷し途中交代。「腫れが引いてからヒーローになれたので良かったです。こんな、しょーもない『4番』をファンの皆さんが、ずっと応援してくださり、気持ちが乗り移った」と苦笑いで感謝した。全快になった両目で打撃も「開眼」。万雷の拍手で沸く観衆の前で胸を張った。【田中彩友美】

▽侍ジャパン稲葉監督 調子が良くなくても、ああいうところで1発がある。ジャパンでも、必ずサヨナラを打ったり、いいところで打っていた。そういうものを持っている。