若きサブマリンが、苦境を乗り越えた。ソフトバンク高橋礼投手(25)が6回2安打1失点(自責は0)の快投で、今季初勝利を手にした。先発に限ると19年9月23日のオリックス戦(京セラドーム大阪)以来、約2年ぶりの白星。「真っすぐも変化球も、強い腕の振りで投げられたのが良かった」と笑みをこぼした。

今オフの自主トレで、楽天牧田に教わった新球カーブが効果的だった。2回。4番中村への3球目に96キロの遅球を見せる。次の129キロ直球で中途半端なスイングを誘い、一ゴロに仕留めた。「カーブの後は真っすぐが生きる」。先輩の明石にも「カーブの後の真っすぐは、全然バッター当たってないから使えよ」と助言された。この日「最遅」だった89キロのカーブと、最速136キロの直球で最大47キロ差をつけた。

今季初登板だった3月27日のロッテ戦では9四死球。4月3日の西武戦では、東京五輪の代表候補だった外崎に死球を与え、左腓骨(ひこつ)骨折の重傷を負わせてしまった。「上半身の小手先に頼ったコントロールのつけ方をしていた。それは何球も続かない」。下半身を含め、体全体を使うことを練習から繰り返した。この日は4四死球だったが、工藤監督は「自分の思い通りにいかなくて苦しんでいる感じがなかった」と合格点を与えた。

この日負けていれば82年以来39年ぶりとなる開幕から対西武5連敗の屈辱だったが、ようやく1勝。再び首位に立った。「しっかり自分の足元を見つめなおす」。高橋礼が、変幻自在のサブマリンへと進化した。【只松憲】