オリックス杉本裕太郎外野手(30)が「発想の転換」に成功した。
同点の5回2死一、二塁。フルカウントまで粘った9球目。内角146キロ直球をさばき、右打席でグルンと1回転した。「簡単に三振しないように。軽打で!」。執念のこもった打球は左翼線に落ちた。7試合連続安打となる決勝タイムリー。一塁ベース上で両拳を突き上げた。
開幕直後は打率が低迷。「(打率が)0割8分まで落ちた時期もあった。打撃コーチが、まだ始まったばかりだから、全然気にしなくて大丈夫」と背中を押してもらった。打率2割9分5厘まで浮上。「強く振る。(打席で)あまり迷ってない。内角は絶対に攻められる。その練習をしてきました」。脳裏にはレジェンドの声が響いた。17年オフ、神戸でイチロー氏の自主トレに参加。「『ホームランばかり狙うのはよくないよ』と。追い込まれたら、待ち方も変えないとって」。最近、突然とあの声がよみがえった。
本塁打を放った際に「ラオウの昇天ポーズ」をファンに呼びかけるが「悔しい思いばかり。絶対、勝ちたいから」と、カウントを追い込まれると軽打を徹底。プロ入り後は「どんな状況でも本塁打しか狙ってなかった。でも、それはやめた。(本塁打を)狙うときと、つなぐときと。その考えにたどり着いた」。今季最多の17安打11得点で連敗を「4」でストップ。15年ドラフト同期入団で、青学大の2学年下の吉田正と初のお立ち台。仲間と切磋琢磨(せっさたくま)すれば、報われる日は来る。【真柴健】