勝敗を決した潮目は、痛すぎる1発だった。

西武は敵地・オリックス戦で序盤から、取られては取り返してのシーソーゲーム。4回で先発・上間永遠を下げ、5回から継投で刻んだ。中継ぎ配置転換の松本航が1点勝ち越しを許す。それでも辻発彦監督は「松本が1点取られてもまだまだこっちは4回攻められるんだから」。序盤の乱打戦にも、スコアボードを見つめながら勝機を見いだしていた直後だった。

6回のマウンドに送り込んだ宮川哲。7、8、9回と1点差勝負で終盤に持ち込めば、分があると踏んでいた。ギャレット、平良、増田の必勝リレーで勝つ-。その意思表示も込めた宮川投入の選択だった。しかし2死から待ち受けたのは、すでにこの試合2安打の吉田正。変化球で用心して入った、はずだった。2球ボール球を見送られ、3球目フォークで空振りを取った後の4球目。152キロの高めの直球を、待っていたかのように右翼席へ運ばれた。「2アウト取ったところで、吉田のホームランね。あれがあまりにも痛すぎた。そこがすべてです」。

だから8回1死一、二塁で、代打栗山巧が併殺打に打ち取られても「あそこでゲッツーになったけど紙一重」と割り切れる。その裏の大量失点に「ポイントはそこじゃない」と言い切れる。吉田正には今季対西武戦打率3割5分7厘で2本目。昨季も3割7分6厘、4本塁打と苦しめられている。それ以上に、試合の“流れ”を読み取りながら采配を振っているからこそ、あの場面、あの展開での1発を痛感。敵地6連戦初戦は3-11。その点差よりも、文字どおり1発に泣いたゲームだった。【栗田成芳】

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