巨人のドラフト1位平内龍太投手(22)が、あの日に誓ったプロの舞台の初登板で好投した。

5点を追う3回無死、いきなり出番が巡ってきた。「初登板ということで、しっかり腕を振って投げよう」と最速150キロの直球で押した。だが首位阪神は甘くない。6回、サンズに146キロ直球を右中間席に運ばれた。初安打となる1発に天を仰いだ直後、3回0/3を1失点で降板。力投をたたえる拍手に感謝し「ストレートである程度は抑えられた」と手応えを口にした。

原点は大好きな祖父千春さんと過ごした時間だ。小学生時代、家から徒歩15分ほどの距離にある祖父の家に通い詰めた。農家だった祖父の田んぼの手入れを手伝い、朝食を食べ、キャッチボールをする。「最高でしたね。野球選手になってなかったら農家になりたかった」と回想する。

そんな祖父が19年12月、倒れた。平内は意識を失った祖父へ「おじいちゃん、おじいちゃん」と都内からテレビ電話で必死に呼びかけた。しかし願いは通じず、12月16日にこの世を去った。最期をみとることはできず、火葬される直前、ひつぎの中の祖父に「おれ、絶対プロ野球選手になるから!」と何度も誓った。

昨年末、恩返しを込めてファン感謝祭でもらったユニホームと帽子を仏壇の横に飾った。小学生時代、周囲にあきれられながらも「絶対にプロに行く」と信じてくれた祖父はきっと天国から見てくれている。

涙で誓ったあの日から491日。夢舞台に立った喜びよりも、新たな決意に表情は引き締まった。「他球団のルーキーが結構活躍している記事や試合を見て感じるところはあった。やっとマウンドに立てたので1試合1試合結果を残して良いところを見せられれば」。満面の笑みは初勝利まで、とっておく。【小早川宗一郎】