オリックスが驚異の粘りで今季初のサヨナラ勝ちを演じた。3点を追う9回2死満塁。T-岡田はファウルで逃げる。7球目。増田の内角速球に詰まった。「抜けてくれ」。右翼フェンス直撃。起死回生の一撃は走者一掃の同点三塁打になった。

この日は3試合ぶりの出場。「何とかチームの勝利のワンピースになりたい」。6年ぶりの三塁打はお膳立てだ。快打の直前、次打者杉本にささやいていた。「絶対につなぐから任せたぞ」。思いをつなぐ。杉本も粘って7球目を打った。詰まったゴロは左前に抜け、プロ初のサヨナラ打になった。

杉本には心の余裕があった。T-岡田に「つなぐ」と言われ、ふと思ったという。「自分で決めろよ」。だが、思い直した。「3点差は満塁本塁打じゃないとな。自分に回ってくるつもりで準備してました」。お立ち台でも笑いを誘った。

「今日、Tさんの香水を借りたので打てました。Tさん、ありがとう!」

験担ぎの香水だ。試合前、杉本がT-岡田に話し掛けた。「いつも使わせてもらっているので今日、僕のをつけてください」。杉本の好調の要因だが、この日は交換。御利益があった。

最善の用兵だった。9回2死一、二塁で代走小田を一塁へ。ジョーンズの三ゴロの二塁送球はアウト判定だったが、リクエストで三塁野選に覆った。小田の快足が生き、大逆転の伏線になった。中嶋監督は「誰1人、あきらめてなかった。『お前ら、すごいな』と」と言う。今季初の3連勝で本拠地の勝率は5割復帰。西武に昨年8月以来の3連戦3連勝で逆襲した。【酒井俊作】