決意の日本復帰から約3カ月。楽天田中将大投手(32)が杜(もり)の都で、節目の1勝を積み重ねた。13年11月3日、巨人との日本シリーズ第7戦以来8年ぶりの本拠地登板で西武打線を6回68球3安打1失点。故障から復帰2戦目で今季初勝利を挙げ、日本通算100勝を達成した。177試合目での到達は48年藤本(巨人)に並ぶ歴代2位のスピード記録。チームの連敗を2で止め、輝かしい自分史の1ページを刻んだ。

 

雨は、降っていない。スタンドも、満員ではない。「ただいま!」。日本一に立った“あの日”から2729日。笑顔の田中将が、地元ファンの前でお立ち台に立った。「何か不思議な感じがします。でもものすごくやはりうれしいです」。決意の入団会見から85日。シーズン開幕から約1カ月遅れでの日本復帰1勝に、自然と声を弾ませた。

米国で輝きを増した、柔軟な投球術で封じた。1、2回は全20球中スライダー、スプリットが65%(13球)を占めた。「あまりにも最初は少なすぎた」と3回以降の全48球中直球とカットボール、ツーシームの速球系変化球で41・7%(20球)を割き、幅を広げた。130キロ中盤のスプリットを同前半に落とした「スプリットチェンジ」を5、6回は組み込み、4~6回は3者凡退。「バランスを崩したというのが一番」と軽打が得意な日本球界の打者にも対応した。

17年前。決意を持って津軽海峡を渡った。北海道・駒大苫小牧1年時の5月。香田監督から寮に住む1年生全員に、大型連休中の帰省を許可された。だが「自分はここに野球をしに来ているので。帰りたくないです」と聞かなかった。3年生の函館遠征に同行。自らの野球人生を最優先に鍛錬を積んだ。

時が立った。立場も変わった。1月30日。8年ぶりに楽天のユニホームに袖を通した。「こだわりたいタイトルは日本一」。悩みに悩んだが、腹をくくり、海を渡って帰ってきた。古巣のために-。だからこそ、故障が憎かった。「何で今なんや」。当初予定の開幕2戦目、3月27日日本ハム戦を右ヒラメ筋損傷で直前に回避。自身へ募る不満を晴らせる唯一無二の場所で、目いっぱい腕を振った。

スタンドには、球団が準備した約1万6000の「おかえりボード」が並んだ。「勝ってその景色を見ることができてすごくよかった」。高卒1年目から重ねた日本での白星は節目の100。「7年空いていたので、あまり実感がない。それよりも初勝利挙げられた、チームが勝ったという喜びが大きい」と今を見た。「毎試合自分のベストを尽くす。最後まで戦う。そういうことしか僕にはできない。そういったことで一緒に盛り上がって、東北、日本を盛り上げていけたら」。ファンは自然と「TANAKA 18」に夢を映す。“あの日”味わった歓喜の再現を願って。【桑原幹久】

▼田中将が今季初勝利を挙げ、日本通算100勝を達成した。初勝利は07年4月18日のソフトバンク5回戦(フルキャスト宮城)で、100勝達成はプロ野球139人目。楽天だけで100勝したのは初めてだ。通算177試合目で到達は39年スタルヒン(巨人)の165試合に次ぎ、48年藤本(巨人)に並ぶ歴代2位タイのスピードとなり、2リーグ制後入団では61年杉浦(南海)の188試合を抜く最速記録だ。まだ36敗の田中将は勝率が7割3分5厘で、100勝達成時の勝率7割以上は5人目。過去4人は最終勝率が6割台に下がり、通算100勝以上で生涯勝率7割以上の投手はいないが、田中将は7割をキープできるか。

▽楽天石井GM兼監督(日本通算100勝を達成した田中将に)「100勝ぐらいならできますから。彼はもっと特別な選手。2回目の登板でここまで仕上げてくるのはさすが。イニングと試合数を重ねれば完全体になる」

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