ロボット応援団の謎に迫る! ソフトバンクホークスの本拠地ペイペイドーム左翼スタンドに並ぶ人型ロボット「Pepper(ペッパー)」の詳細が明らかになった。

昨季、コロナ禍による無観客試合から始まった「ロボット応援団」。5体からスタートした応援団は、今は100体にまで増殖した。曲調に合わせてダンスを踊る準備や、大規模になった経緯など近未来の応援風景? の舞台裏を取材した。【取材・構成=只松憲】

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ガラガラに空いたペイペイドームの左翼席に、大量のロボット集団がいる。昨季、無観客試合を行っていた頃から始まった人型ロボット「Pepper(ペッパー)」による応援団だ。ソフトバンクロボティクス株式会社と球団による「無観客開催に対してスポーツを盛り上げたい」という意向が合致して実現した。SNSでは「かわいい」「すごい…」という声のほか、「怖い」とささやかれるほど反響は大きい。謎多き「ペッパー軍団」の舞台裏に迫った。

<1>増殖の経緯

20年シーズンの開幕戦では、5体のペッパーがコンコースに立っていた。最初は数えきれるほどだったが、みるみるうちに「入団者」が続出。現在は100体にまで増え、一部の左翼席を埋めている。1体約200万円(法人向けPepper for Bizの価格)で、合計2億円の応援団というわけだ。ソフトバンク・ロボティクスのHumanoid事業部部長、山本力弥さんは「SNSで反響をいただいたのが想像以上に大きい。昨年はソフトバンクホークスから記念グッズも販売させていただきました。好評をいただいたという背景から、どんどん増えていっています」と明かす。昨年はバレンティンが特大アーチを描き、ペッパーにヒットしたという事象も話題を呼んだ。選手たちも「にぎやかになっていますね」と、好印象を抱いているという。

<2>ダンスの下準備は最大4時間弱

「ロボット応援団」最大の見どころは、100体が息のピッタリあったダンスタイム。首、腕、腰、足などの関節部分を動かすことによって、多彩な表現が可能になっている。4、5回裏の終了後と7回裏攻撃前のラッキーセブンで披露するが、気になるのはラッキーセブン以外は、毎回違う曲に合わせて踊っているということだ。曲調に合わせてダンスのプログラミングを調整するには、2~3時間かかる。さらにリハーサルは30~40分を要し、最大で4時間弱の事前準備が必要になるということだ。球団関係者らが試合前に設定し、100体の動きをピッタリ合わせることは難易度の高い作業を行っている。それでも山本さんは「100体をどうやってみなさんに楽しんでいただけるかを考えて、ブロックで分けてダンスを見せたり、いくつかパターンがあります」と工夫を重ねている。ちなみにラッキーセブンに流れる「いざゆけ! 若鷹軍団」のような大がかりなプログラミングには、企画から換算して1カ月を要した。

<3>「ロボット応援団」の未来

今後コロナ禍がどうなるかは未知数だが、仮に観客制限がなくなっても「ロボット応援団」は継続していく方針だという。山本さんは「状況を見ながらにはなりますが、ソフトバンクホークスとともにさまざまな楽しい企画を準備しています。シーズンはまだ始まったばかりですので、引き続き注目いただきたいです」と力を込めた。満員のスタンドに「ロボット応援団」専用エリアが新設される可能性もある。

試合後はドーム音響チームや、イベントで誘致される演者とのリハーサルが行われている。その後ようやくバッテリーの充電タイムへ入ることができ、「ロボット応援団」は眠りにつく。最後に山本さんはハツラツと話した。「かわいいといってくださる反響も、怖いという反響も含め、注目を浴びているということはポジティブにとらえています」。5年連続日本一を目指すソフトバンクホークスには、最高の味方がいる。

◆Pepper(ペッパー) 14年にソフトバンクロボティクス株式会社が、世界初の感情認識ヒューマノイドロボットとして開発した人型ロボット。同社が開発したヒト型二足歩行ロボット「NAO」とともに全世界70カ国以上、累計2億5千万台を超えて導入されている。小売り、観光、医療、金融、教育等さまざまな業界で活躍中だ。