中大は、今季開幕から6連勝と首位を独走しながら、国学院大に逆転優勝を許し、2年ぶり26回目のリーグ優勝は、はかなく消えた。

プロ注目の古賀悠斗捕手(4年=福岡大大濠)は「目の前で優勝を逃した。今は悔しいのひと言」と唇をかみしめた。

6回まで国学院大打線を2安打1失点に抑えていた皆川喬涼投手(4年=前橋育英)に代わり、7回から大栄陽斗投手(2年=仙台育英)が登板。1点リードで迎えた8回裏。押し出し四球で同点。さらに無死満塁で右犠飛を浴び逆転を許し降板した。代わってマウンドに上がった西館勇陽投手(2年=花巻東)は1死満塁から左犠飛を許し、この回、3点を失い勝負を決められた。

古賀は「自分のリードをもう一度見直して、考え直したい」と、声を振り絞った。守備の要、そして主将として。人一倍、敗戦の責任を感じていた。

国学院大と8勝で並び、直接対決となった最終週。10日の第1戦ではタイブレークの末、5-6で敗戦。翌日、練習はオフとなったが、古賀は寮で1人悩んでいた。「明日からの練習、みんなにどんな声をかけようか…」。あと1試合。まだ優勝の可能性はある。チームの士気が落ちない言葉、声、態度とは何か。「まずは自分から声を出すことにしよう。まだ落ち込むところじゃないよって…」。

14日、朝6時30分。グラウンドには一番の笑顔で、大きな声を出す古賀の姿があった。1人1人、選手の名前を呼び「元気だせー」と叫ぶ。古賀の笑顔に、思わず選手たちにも笑みがこぼれ、大きな声が飛び覇気が戻る。チームがみるみる生き返っていった。

最後まで古賀がチームを引っ張った。1点先制され迎えた3回表には、2死一、三塁から右前適時打で同点に。「まだまだあきらめない」主将の一打にチームも応えた。6回には相手失策などで、一時は勝ち越しにも成功した。そして、選手たちから元気な声は途切れることはなく、粘り強く最後の1球まであきらめない。敗戦にも、収穫の大きい春を証明した。

古賀は「秋は優勝できるチームにしたい。春を生かして、秋に臨みます」と力を込めた。この悔しさを秋へ。古賀が率いる中大は、もっと強くなる。【保坂淑子】