規格外な活躍で球界を沸かせる阪神佐藤輝明内野手(22)の好調要因を、母校近大の田中秀昌監督(64)が解説した。関西学生野球春季リーグ最終日の5月31日、関大に快勝して3位が決まり、取材に応対。プロの壁に当たったかと思いきや、壁を破り続ける教え子の適応能力は「三振減と四球増」に表れていると分析した。後輩たちも生ける伝説秘話を語り継ぎ、日々強烈な刺激をもらっている。佐藤輝は1日「日本生命セ・パ交流戦」でオリックス戦(甲子園)に臨む。

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10安打5得点で快勝した春季リーグ最終戦後、近大・田中監督の声がひときわはずんだのは、旬のOBが話題に出たときだ。「10年くらいメシを食べているような顔してますね。スゴイのひと言です」。脱帽するのは阪神の大物ルーキー佐藤輝だ。5月終了時点で13本塁打はリーグ3位。大学の4年間、指導した指揮官が成長ぶりを分析した。

「ボールを見られるようになりました。三振が減って、四球の数が増えているんじゃないですか。もともと、半速球は打つのがうまかった。速いストレートを打てているし、技術がアップしているんじゃないか」

佐藤輝が出場した48試合を前後半に分けてみると、傾向は顕著だ、開幕からの24試合は三振が全打席の約42%だったが、あとの24試合は28%超に激減。一方で四球出塁は倍増した。

田中監督は始動後のトップの位置を交えて解説し、プロの球威でも間合いを計れている点を好調の要因に挙げた。テレビで観戦して、気づいた点があるという。「研究心がある。ベンチで(メモを)書いているのを見た。(大学時は)試合中でベンチで、とかはまずなかった」。修正を重ねる適応能力と探究心が大活躍を生んでいると見ている。

5月28日の西武戦で放った1試合3発の衝撃は、メットライフドームから遠く離れた奈良・生駒市の「開明寮」にも届いた。1発打つたびに食堂で観戦する後輩たちが歓声。「佐藤さんが打席のとき、寮でみんなくぎ付けになって見ています。自分は部屋で見ていたのですが『オオーッ!』って声が聞こえてきて」。そう明かすのは、この日6回2死満塁で3点三塁打を放った竹谷理央外野手(3年=星稜)。佐藤輝の背中を見て学んだ1人だ。

「技術であったり、自分の考え方や、信念をしっかり持ってやられていた。自分も確固たるモノを持ちたい。刺激にもなります」

佐藤輝が近大でプレーしていたころ、深夜2時に夜食を食べる姿を目撃した部員もいる。今や生ける伝説。近大は今春、3位に終わったが、大先輩の活躍は秋連覇へ大きな励みになっている。プロでも超速進化を続ける怪物新人に、母校の視線は熱い。【酒井俊作】