DeNAは交流戦前、勝率が2割9分3厘(12勝29敗6分け)しかなかったが、交流戦は6割(9勝6敗3分け)と2倍以上に増えた。なぜ、突如として強くなったのか。「DeNA躍進の理由」と題し、2回に分けて分析する。

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伊藤光捕手(32)が2番捕手として出場するようになったのは、交流戦初戦の5月25日オリックス戦(横浜)からだ。それまで2番打者は関根大気、柴田竜拓、牧秀悟、宮崎敏郎、倉本寿彦、知野直人、大和、田中俊太と8人を起用してきた。しかし、打率2割1分2厘、1本塁打、7打点と、投手が打つ9番以外では最も低打率だった。

三浦大輔監督は伊藤光を8番から2番に替えた理由について「何でもできる。右打ちもバントも細かいこともできる。粘りがあるというところも判断材料になった」と説明した。5月26日のオリックス戦。2-12と10点差をつけられた6回裏だった。1死走者なしから、伊藤光が15球粘って四球で出塁した。連打の呼び水となり、1点を返した。この回限りで先発の宮城は球数が110球に達し、降板した。

何でもできた。6月9日西武戦(メットライフドーム)は1回に8球粘って中前打。3番佐野恵太の打席で二盗に成功した。捕手の盗塁は今季チーム初だ。第2打席は四球。第3打席は猛チャージをかわしての犠打。理想的な働きだった。同11日の日本ハム戦は3打席連続犠打。DeNA野手の1試合3犠打は14年山崎憲晴以来7年ぶり。同13日の第1打席で進塁打の二塁ゴロを打つと、第2、3打席は安打。4打席合計で30球を投げさせた。交流戦通算は打率2割6分3厘、0本塁打、3打点。一見すると飛び抜けてはいない。だが、チームで11四死球はオースティンに次ぎ、7犠打は最多、出塁率3割8分2厘はオースティン、牧秀悟に次ぐ3位と地味に輝いた。

リード面でも光った。交流戦の防御率は4・90だが、大局観がある。三浦監督は「投手の良さを引き出すリードと状況判断。投手の方を優先させるのか、打者の反応を見ながらやるのか」と話す。点差やアウトカウント、打順を見て、時には真ん中に構える大胆さもある。今永昇太、浜口遥大の両左腕が「光さんのおかげ」を何度も連発した。

具体的な場面がある。6月6日ロッテ戦(横浜)の4回。2-0とリードしていた。2死から角中に中前打を許した場面。6番レアードを迎えた。マウンドの今永は「あの場面は一番よくないのは2ランを打たれることだと思った。ここは正直、ストライクはいらないと。光さんが、そういうボール要求をたくさんしてくれた」。ストレートの四球で歩かせた後、7番藤岡に左翼へ適時二塁打を浴びた。だが、8番を敬遠し、9番投手の小島から三振を奪った。同点2ランを浴びるリスクを回避し、失点は1で済んだ。この試合は最終的に4-3と1点差でサヨナラ勝ち。勝負どころを心得ている、ベテランの味が染み出ていた。

伊藤光は開幕前の3月2日、こう話していた。「勝てる捕手が一番信頼につながると思う。『こいつに任せれば大丈夫』。それが正捕手の条件だと思う」。スタメンマスクをかぶれば10勝7敗3分けで勝率5割8分9厘。2番に入った交流戦では9勝5敗3分けで勝率6割4分3厘。まさに「勝てる捕手」を体現していた。【斎藤直樹】

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