世界一監督から、侍ジャパン稲葉篤紀監督へ金言伝授だ。巨人原辰徳監督(63)が16日、東京五輪に臨む侍ジャパン発表を受け、指揮官にエールを送った。川崎市のジャイアンツ休場での全体練習の冒頭では、選出された菅野、坂本、中川と村田善コーチに全員で大きな拍手を送った。3人を含めた24人の侍に向け「前回のプレミアも経験しているし、落ち着いて戦えるんじゃないでしょうかね」と笑顔で語った。

09年WBCで日本代表を率い、大会連覇へと導いた。国際大会を戦う重圧を体感し、受け止めた上で世界の頂点へと上り詰めた。その経験則がある。「いろんなものを利にする。今回に関しては地の利というのはあるが、どういうことでも利に変えるのは、とっても重要なことだと思いますね」。12年前、世界一への道のりで韓国とは決勝戦を含めて5度対戦。「応援ははるかに韓国の方が多くてね。でも、それを我々も『利』で考えようと」。相手への声援をも『利=プラス』にとらえ、パワーにつなげた。「いろんなことを利に変えられる考え方というのは必要だと思いますよ」。新型コロナウイルスの感染拡大で観客数は未定だが、想定外のことが起きるのが世界舞台。マイナスをプラスへと変換する思考法が、頂につながると説いた。

指揮官としての心得は、もう1つある。「自分の考えというものを(持って)しっかり頑張ってほしい。そして、それに対して『あっ』と思ったら、過ちをはばかることなく変えるぐらいのね、それが監督ですから」。野球の試合は「生きもの」。相手の情報が違ったり、事前の想定から試合の流れが変化したり、ストライクゾーンの違いに戸惑ったり、万事が思い通りにいかないのが国際大会でもある。「思い切ってやってもらいたい。稲葉監督も含めて経験がある人たちが、日本代表チームを作っているわけだからね。その辺は、我々が老婆心ながら心配することはないよ」と笑った。臨機応変に、柔軟に、タクトを振る姿を期待した。

指揮官としての心得に、原監督は「挑戦心」を添えて贈った。「経験豊富な人たちがそろっているから。心配ないと思いますけどね。ただ、やっぱり一発勝負の中での、独特のオリンピックという、あまり味わったことのある人はいないわけだからね。逆に、チャレンジ精神の中でやってもらいたいなと思いますね。できる範囲のサポートは惜しまないつもりでと、個人的には思っています」。母国で金メダルを目指す日本代表への、全面協力を誓った。【浜本卓也】

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