侍ジャパンの、巨人のエースが、復活劇を勝利で飾れなかった。出場選手登録を抹消されて再調整していた菅野智之投手(31)が、6月13日のロッテ戦以来18日ぶりに広島戦で先発登板。2回1/3で2本塁打を含め6安打4失点、32球で降板した。東京五輪の初戦は28日。視察した侍ジャパン建山投手コーチを安心させたかったが、本来の姿にはほど遠く、五輪本番に向けても不安を残す内容となった。チームは10得点で打ち勝ち、首位阪神とのゲーム差を2に縮めた。

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信じ難い光景を目にした巨人菅野が、首をひねった。3回1死一塁、打席には同じく侍ジャパンに内定している広島鈴木誠。カウント1-2からの4球目、捕手小林が内角に構えたミットが真ん中に動いた。逃さず完璧にしとめられた144キロ直球は、美しい放物線を描いてバックスクリーンに飛び込んだ。侍ジャパン建山投手コーチに復活劇を見せるはずだったが、32球で降板。「チームに迷惑をかけて申し訳ないです。1日でも早く100%の状態に戻れるように頑張ります」とのコメントを残した。

万全のはずだった。右肘の違和感からの復帰2戦目となった6月13日ロッテ戦は2回2/3を4失点でKO。自らの意思で登録抹消による再調整の道を選んだ。当初の目標だった同27日ヤクルト戦(神宮)をパスして、この日を復帰登板に設定。圧倒的な姿を見せるつもりだった。

現実は厳しかった。プロ入り後156キロを誇る最速も145キロ止まり。全球種で制球も安定しなかった。初回に小園に中越え先制適時二塁打を許すと、3回は鈴木誠の前に西川にも右翼席へ運ばれた。プロ入り9年目。昨季までの7シーズンで2ケタ勝利を挙げたが今季はすでに3度も登録を抹消され、9試合で2勝4敗と苦闘の日々を送る。

圧倒的な存在感、四肢を大きく使った投球フォーム、150キロ台の直球、多彩かつ質の高い変化球、ゾーンの高低左右に投げ分ける制球力に投球術。すべてを兼ね備えるのが本来の姿だが、宮本投手チーフコーチは「すべての状態がトモらしくないですよね。中17日を空けて、万全な状態で来られないといったところでしょうね。僕の中では次の登板は難しいのかな、というのはあります」との考えを示した。東京五輪の初戦は28日。抹消となればスケジュール的にも五輪出場は難しくなる。残された時間は多くない。【浜本卓也】

 

▽巨人宮本投手チーフコーチ(中17日で復帰登板した菅野について)「うまく機能してない。バランスも悪いし、真っすぐもいかないし、すべてに関していいボールもない。もう1度やっぱり、すべてに関して体のメカニックを整えないとというのはありますよね」