はち切れそうな虎党の思いが、大きなため息に変わった。阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手(22)は、バッターボックスで約5秒立ち尽くすと、悔しさを押し殺すように下を向いてベンチへ歩みを進めた。

これがスターの宿命か。3点ビハインドで迎えた8回。糸原の適時打、サンズの押し出し四球で1点差に迫り、2死満塁で巡ってきた。2日前には3点差をひっくり返すサヨナラ劇。その起点となる代打安打を放った。“再現”へ甲子園のボルテージはマックスだったが、代わったばかりの左腕砂田の直球に空振り三振。ベンチでは珍しく、バットをたたきつける音が響いた。

矢野監督 そりゃ勝負やからやられることもあるし、逆に初戦みたいなこともあるんでね。それは勝負事なんで、結果を受けて止めてどう前に進んでいくかだけしかないと思う。

第1打席では3試合連続安打となる二塁打を右翼線へ飛ばしていたが、その後は左腕今永の前に2三振。いずれも直球に押され、力なく凡退した。前半戦を無念の「KKK」で終え、積み重なった三振は121個。新人最多の99年福留(中日)に、前半戦だけで並んだ。かつて「三振は自分の技術が足りないから」と語っていた通り、大きな宿題が残った。

一方で、新人左打者歴代1位の1946年(昭21)大下弘(セネタース)に並ぶ20本のアーチを放ったことも事実。そのパワーに期待がかかる球宴ホームランダービーの組み合わせ抽選が、この日行われ、16日の第1戦(メットライフドーム)でマーティン(ロッテ)との1回戦が決まった。さらに指揮を執る巨人原監督が第1戦での「2番左翼」起用も明言。「やっぱりホームランというのを一番見てもらいたい」。すでに公言済みの1発を放つため、悔しさを夢の祭典へぶつける。【中野椋】

▼ルーキー佐藤輝が3三振を喫し、今季の三振が121。三振のシーズン最多記録は93年ブライアント(近鉄)の204三振があるが、新人では99年福留(中日)の121三振に並ぶ最多タイ。

◆阪神佐藤輝の前半戦記録アラカルト◆

▼初打席で1発 3月5日のオープン戦のソフトバンク戦。石川との“モノノフ対決”で、1回の初打席で左翼へ本塁打。阪神の新人がオープン戦初打席で本塁打を放ったのは、87年の八木裕以来だった。

▼新人最多HR オープン戦で3戦連発するなど6本塁打でオープン戦本塁打王。新人のオープン戦6本塁打は72年の佐々木恭介(近鉄)を抜いてドラフト後最多。

▼初アーチ 開幕2戦目のヤクルト戦(神宮)で左腕田口から1回に中堅へ2ラン。開幕2戦目での新人の初本塁打は、球団最速タイだった。

▼初4番で満塁弾 5月2日の広島戦(甲子園)の5回に逆転の満塁本塁打。初めて4番に入った試合で満塁本塁打の新人は史上初のことだった。

▼1試合3発 5月28日の西武戦(メットライフドーム)で、2、6、9回に本塁打。新人の1試合3発は58年の長嶋(巨人)以来63年ぶりの快挙。球団では初めてだった。

▼ファン投票1位 オールスターファン投票の第1回中間発表で全体1位。最終的には新人初となるセ・リーグ最多得票で選出。

▼1試合5K 7月4日の広島戦(マツダスタジアム)で1試合5三振。セの新人野手では初だった。