ついにアーチストを超えた! 阪神佐藤輝明内野手(22)がDeNA戦の9回に左翼へ23号ソロを放ち、田淵幸一が記録した球団新人最多本塁打を抜いた。その直前の守備では右翼から強肩を披露し、タッチアップを阻止。チームの連勝は「4」で止まり、20日にも首位陥落危機を迎えたが、猛虎には心強いルーキーがいる。

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また球団史に名を刻んだ。2点ビハインドの9回。佐藤輝が力感なくバットを振り抜いた。カウント1-2と追い込まれてから、三嶋の156キロ直球にバットを内側から入れ込んだ。約5秒後、23号ソロが左翼席へ着弾した。

「残り1回しかなかったんで自分のスイングということを心掛けていました。追い込まれてからだったんで、いろいろ頭に入れながらでしたけど、いい本塁打だったと思います」

69年田淵幸一の球団新人最多本塁打記録に並んでも心の中はいたってシンプル。2試合ぶりの本塁打で、通算474本塁打のレジェンドをあっさりと抜いた。

「記録を超えることができたのは自分のスイングをしてきた結果なんで、すごいうれしいです」

直前のビッグプレーが追い風になった。8回裏1死満塁。宮崎の右翼へのライナーに誤って前進し、腕を伸ばして“バンザイ”でキャッチ。そこから体勢を立て直し、ワンステップでホームへワンバウンドのストライク送球を届けた。タッチアップを試みた三塁走者桑原をタッチアウトに仕留め「落ち着いていいボールを投げられた」。187センチ、94キロの身体能力がなせる、野性味あふれるレーザービームで気持ちも乗った。

矢野監督も「逆方向だったけど、輝らしく打てたんじゃない。今まで球団の記録を抜くとか、誰もやっていないことをやったというのはもちろんすごいこと。でもそこだけを目標にやっているわけじゃないんでね。さらにもっと高い目標を持っていると思うし、もちろんその可能性を秘めた選手なんで、俺も楽しみにしています」とたたえた。

これで58年に29発を放った長嶋茂雄(巨人)にあと「6」、同1位で31発を放った59年桑田武(大洋)、86年清原和博(西武)にはあと「8」に迫った。「これからもっと積み重ねてもっとホームラン打ちたいと思っています」。まだまだ歴史の扉をこじ開ける気概だ。

ルーキーの1発で1点差に迫ったが、チームは敗れ連勝は3でストップ。仮にも20日に阪神が敗れ、巨人が勝てば首位陥落の危機が再び訪れた。歴史的1発にも満足しない佐藤輝が、再び救ってみせる。【中野椋】