DeNA牧秀悟内野手(23)が長いプロ野球の歴史で初となる、新人でのサイクル安打を記録した。

阪神20回戦の9回、右翼線へ三塁打を放って達成した。6番二塁で2試合ぶりにスタメン出場すると、2回に右越え二塁打、3回に14号3ラン、4回に中前打を放っていた。この時点で新人の球団記録を62年ぶりに更新する8度目の猛打賞をマークしていたが、さらなる金字塔を打ち立てた。

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牧は狙っていた。「三塁打が出ればサイクルと。チームメートの方に『こういう機会はめったにないから』と言われていたので」。6回は「力が入って」捕邪飛。9回先頭、岩貞の2球目のスライダーを右翼線に打ち上げた。「打った瞬間はファウルかアウトかと思っていた。回っている時に、これ行けるんじゃないかと思った」。ポトリと落ちた打球に全力疾走。仲の良い佐藤輝が処理しようとする打球はフェンス際へ。立ったまま三塁へ到達すると、ベンチに右手を上げた。

場内アナウンスでサイクルが告げられた。「長いプロ野球の歴史の中でこういう名誉なことができて、うれしいです。自分以上にベンチの方が喜んでくれた」。守備に就く際、球場全体から再び拍手を浴びた。「阪神ファンの方も拍手してくださって気持ちがたかぶった」と実感した。

右方向への打球を調子のバロメーターにしている。第1打席に右越え二塁打、第2打席は右中間本塁打。「今日は特に京セラの広い球場で右中間にホームランが打てた。第1打席も逆方向に打てて理想とした打撃ができた」。柴田がけがから復帰し、後半戦はスタメンから外れる機会も増えた。「スタメンじゃない時も準備ができているのが、結果につながっている。相手の投手(の分析)、自分の調整ができている」。左投手に対する際の基本、逆方向への打球を意識したことが、快挙につながった。

猛打賞記録以外にも、次々と新人記録に並んだ。1試合5打点は59年8月6日麻生実男に並ぶ、球団の新人最多タイ。通算20二塁打も、中大の先輩である59年桑田武に並んだ。チームは下位も「ここからは上げていこう。使ってくれる時は思い切って」とモチベーションは高いまま。この日は、今季3勝を献上している伊藤将を打ち崩したことを喜んだ。「チームとしても個人としても伊藤さんを打てないことが続いていた。前回負けた投手から打てたことは良かった。個人としても次に生かせるかな」。大きな目で、しっかり次を見据えた。【斎藤直樹】

▽DeNA三浦監督(牧のサイクルに)「すごいですね。新人で初ですか。打席で集中力があって、しっかり走っていたからこそ。あれだけ(逆方向へ)飛距離が出るのが牧の持ち味」

○…牧の最後の三塁打は、同じルーキー阪神佐藤輝が守る右翼へ飛んだ。7月20日にはお互いの寮をネットで結んでインスタライブという公開トークショーを行った仲。この日の試合直前にも、二塁後方で5メートルほどの距離をとりながら話していた。牧は新人王を争う佐藤輝に負けるところを「足の速さ」と認めていたが、全力疾走することで快挙につなげた。

▼ルーキー牧が19年4月9日梅野(阪神)以来、プロ野球70人、75度目のサイクル安打を達成。新人での達成はプロ野球史上初となった。DeNAでは18年桑原以来8人、10度目で、10度達成した球団はDeNAが初めて。ちなみに、19年に新人だった近本(阪神)が、オールスターでサイクル安打を達成している。

▼牧は4安打5打点。新人の1試合5打点は今年の佐藤輝(阪神)も記録しているが、DeNAでは大洋時代の59年8月6日国鉄戦の麻生以来62年ぶりの球団最多タイ。また、4安打は6月1日ソフトバンク戦に次いで自身2度目。4安打を2度記録した新人は球団では牧が初めてとなった。