DeNA宮国椋丞投手(29)が悲願の“復帰登板”を白星で飾った。

古巣巨人戦に先発。5回7安打2失点で、かつては自主トレをともにした相手エース菅野に投げ勝った。昨季限りで巨人を戦力外となり、亡き父の言葉を胸に一から出直した男が、新天地で歓喜の瞬間を迎えた。

   ◇   ◇   ◇   

宮国は移籍後の初球、先頭の松原へ、126キロの外角スライダーから入った。直球とフォークを中心とした巨人時代とは違う、新しい姿。スライダー、シュートで両サイドを丁寧に突く。そんな意思が垣間見えた1球だった。吉川と岡本和に連続適時打を浴びた。だが、崩れることなく、中島をシュートで三ゴロに仕留めると、2回以降は立ち直った。

青いユニホームを着た、新たな仲間に感謝した。2回は中堅桑原がダイビングキャッチ。4回1死一、二塁のピンチでは、遊-二-一の併殺で切り抜けた。思わずグラブをたたいた。5回2死一、二塁では、初回に適時打を打たれた吉川を左飛に抑えた。左翼佐野の捕球を確認すると、本塁付近で捕手山本とグラブタッチ。野球ができる喜びがあふれ出た。

5回までに7安打を浴びながらも、わずか1四球とテンポが良かった。初回の2点で切り抜けると、味方となった青い打線が援護してくれた。宮崎の2打席連続適時打で追いつくと、ソトが勝ち越し2点二塁打。山本のスクイズに、宮国の代打楠本が2号3ランを放った。一気に7得点で8-2と大逆転した。

お立ち台では、「はじめまして。宮国と申します。素直にうれしいですし、信じられない気持ちでいっぱい。粘り強い投球ができてよかったです。本当にありがとうございました」と笑みを浮かべた。

昨季限りで巨人を戦力外となった。12球団合同トライアウトを受けたが、右肩を痛めた影響もあり直球の最速は140キロ。オファーはなかった。それでも現役を諦めなかった。どこにも所属せず自主トレに励んだ。極秘で入団テストを受け、DeNAと契約を結んだのは3月だった。「亡くなったおやじに『投げられるんだったら1年でも長く野球を続けなさい』とずっと言われていた。それでやってこられた」。父透さんの言葉が支えだった。

相手は昨季まで所属した巨人、投げ合うのは19年まで自主トレをともにした菅野だ。「昨年からこうやってマウンドに立てることが想像しづらかったですし、ましてやお世話になった菅野さん。感慨深いものはありますが、少しでも成長した姿を見せられるようなピッチングができればいい」。言葉通りの粘りの投球だった。【斎藤直樹】