エースが帰ってきた。ヤクルト小川泰弘投手(31)が、7回2/3を6安打無失点と好投した。7月3日中日戦以来の白星で8勝目を挙げた。同7日に新型コロナウイルス陽性判定を受け、離脱を経験。復帰後、満足いく投球をすることができなかった。体を追い込み、立て直しを敢行。神宮での“スミ1勝利”を呼び込んだ。チームは首位阪神との2連戦を1勝1分け。2・5差に迫った。

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1点勝負の緊迫したマウンドで、小川は何度も踏ん張った。前回登板の8日阪神戦では、5回2/3を4失点で4敗目を喫した。中6日で同じ相手との対決。「なんとかやり返したいと思っていた。ピンチは作ってしまったが、なんとか粘れた」と安堵(あんど)した。

1回村上の左前適時打で先制してもらったが、4回まで毎回先頭打者に出塁を許し、得点圏まで進められる苦しい展開。それでも下半身をしっかり使って投げ込んだ。7奪三振はすべて直球。要所で力で押し切れた。しかし、8回2死から安打と2つの四球で満塁のピンチで降板。「本当はあそこからギアを上げてなんとか投げきりたかったが、そこまで甘くはないなと思った」と反省した。

コロナから復帰しても、体は完全復活とはならなかった。「息がなかなか戻らなかった」。エキシビションマッチや2軍戦で調整をしたが、1軍復帰戦の8月31日巨人戦は3回2/3を4失点でKO。前回登板も打たれた。復調へ向け、走り込みやアメリカンノックを増やし、徹底的に追い込み直した。「前回登板ぐらいからファウルも取れるようになってきて、ちょっとずつ戻ってきているのかなと思います」とうなずいた。

今季は開幕投手を任され、チームトップの8勝。あと1本を許さず、初回の1点の援護のみの“スミ1”勝利に貢献。シーズンヤマ場へ向けて、欠かせない存在が帰ってきた。「混戦なので1つも落とせない。スキをなくして、自分の持っているものを1試合1試合出し切って貢献したい」と静かに意気込んだ。11勝を挙げてリーグ優勝に導いた15年のように、投手陣を引っ張って、逆転優勝を狙う。【湯本勝大】

 

▽ヤクルト高津監督(小川の投球に)「イニングを追うごとにキレも出てきたし、制球もよくなってきた。立ち上がりを慎重に入っていた感じは受けました」

▽ヤクルト村上(1回2死三塁で左前適時打)「小川さんに先に先制点をという気持ちで打席に入りました。粘り強く、くらいついていきました」