首位ロッテが1-0の僅差を制し、井口資仁監督(46)就任4年目で最多の貯金15とした。

6月の右肘手術から復活した石川歩投手(33)が6回無失点。蜃気楼(しんきろう)で有名な富山・魚津市生まれの右腕が、苦しいリハビリを越え、くっきりと優勝戦線に加わった。22日のソフトバンク戦(ZOZOマリン)に勝利し、オリックスが日本ハムに敗れれば、ロッテに51年ぶりとなる優勝マジック「22」が点灯する。

   ◇   ◇   ◇

札幌ドームの球速表示はいつもと違った。直球で138キロ? さすがに遅い。でも石川は気にもしない。

「昨日おとといから言われてたので。まぁ、そこが良かったかなと。スピードガンが速いとちょっと力んじゃうので、遅いくらいで良かったかなと」

自身の感覚で140キロ台中盤を、低めに集めた。「僕の球威で押せる打者があまりいないので」と自虐しつつも、淡々とアウトを重ねた。結果、6回無失点。4カ月半ぶりの白星で貯金15に貢献した。

右肘に昨季終盤から違和感があり、今年6月にクリーニング手術を決断した。「リハビリ大変だったですけど、間に合って良かったです」。全治3~4カ月の見込みだったが回復は早まった。トミー・ジョン手術のリハビリ中の西野、種市と体を動かした夏。「お先です、って感じっすね」。ドライな言葉とは裏腹に、仲間たちの思いを背負って熱く投げる。表面上は、ひょうひょうと。

好きな言葉は「都市伝説」だ。「好きなんで、単純に。都市伝説全般っすね」と目が輝き始める。UFOの目撃経験はいまだにないが、さすがは魚津育ち。蜃気楼なら「あります、あります」。光の仕業で富山湾の向こうの景色が伸びたり、反転したり。「合図があるんっすよ、出たら。花火が上がって」。故郷の五感が懐かしい。

石川五右衛門にちなんで「絶景です」とお立ち台で言った新人時代から、もう7年がたつ。7回以降はベンチ前列で眺めた。「(佐々木)千隼とか国吉が僕の試合で投げたのがほとんど初めてだったので。新鮮な気持ちで見てました」。変わりゆくチームで、ともに戦う。「投手がみんないいので。負けないように、離脱しないように」。自虐なブラックも入れつつ、この先の週1登板に意気込む。やるべきことは、くっきり見える。【金子真仁】

◆蜃気楼 大気中で光が屈折し、5~20キロ離れた先に虚像が見える自然現象。気温や風など発生条件は限定的で、魚津市ホームページでは「春(4月から5月)は実際の景色の上側に虚像が出現し、冬(11~3月)は実際の景色の下側に反転した虚像が見える」などとしている。