8年ぶりの月夜に、10年ぶりの貯金13を決めた。ヤクルトが初回に4点を奪って勢いに乗り連勝を4に伸ばした。

13年以来の中秋の名月と満月が重なった特別な夜。煌々(こうこう)と輝く横浜の夜空の下、打線が13安打と奮起した。貯金13は11年以来。首位阪神の背中をピタリと追うシーズン佳境、中村悠平捕手(31)と高津臣吾監督(52)の2人の“監督”の存在感が光る。

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“現場監督”中村は、最後の打者を左飛に仕留めると、右手を月夜に突き上げた。1回1死の第1打席。左前打を放って7試合連続安打とすると、2点リードの6回先頭は中前打で出塁。西浦の左前打で、中盤での貴重なホームを踏んだ。リードでも5投手を導いて2失点でまとめ、攻守で存在感を示した。

春季キャンプで臨時コーチを務めたOBの古田敦也氏から「捕手で勝つ」精神をたたき込まれた。「僕らがその気になって、このチームを引っ張るんだっていう覚悟であったり、そういう思いは常に持っていなさい、と」。ひと言も逃すまいと、メモに残し続けた。強い信念を持って、29試合の出場にとどまった昨季から完全復活。正捕手に返り咲いた。前半戦は若手投手の先発時は古賀がマスクをかぶることが多かったが、後半戦はここまで29試合中24試合でスタメン。チーム防御率は3・56だが、8月は2・88、9月は2・85と快進撃を支える投手陣をけん引している。打っても打率はリーグ10位の2割9分7厘で、12犠打はリーグ2位タイ。さまざまな役割をこなす扇の要に、高津監督も「中村の成績が勝敗に大きく影響する。大きな存在」と信頼を置く。

そして、高津監督は言葉と背中で、ナインの力を存分に引き出している。2カード連続負け越しで迎えた7日阪神戦前。選手を集め、現役時代に野村克也監督の下で日本一になった経験を元に、熱く語りかけた。

「(野村監督は)『勝敗は時の運や。人事を尽くして天命を待とう。しっかり努力をして、あとは神様しか勝つ負けるは左右できない』と。そしてもう一つ。『絶対大丈夫だから』と。君たちが自分たちのことをしっかりと理解して、君たちがチームスワローズをしっかり理解したら、その大丈夫という根拠は、絶対に崩れない」

1番に定着した4年目塩見は打率3割1厘と開花中。青木、山田、村上の枢軸に新たな力が加わり、「切り札」川端も控える。オスナ、サンタナの新助っ人も含めた“一丸力”こそ快進撃の源。勝負どころでの指揮官の熱弁に応えるように、7日以降は7勝3敗3分け。14日以降は黒星がない。6年ぶりの優勝へ-。上げ潮に乗る燕には、力強い2人の“監督”がいる。【湯本勝大】

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