頼れるチーム最年長が宿敵を崖っぷちに追い込んだ。1週間ぶりにスタメン起用された阪神糸井嘉男外野手(40)が1点リードの5回2死満塁で、右翼線へ3点適時二塁打を放ち、勝利に導いた。これで14年ぶりの巨人戦勝ち越しに王手となり、4ゲーム差に広げた。巨人は自力優勝の可能性が消滅。さあ、次は首位再浮上だ。

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超人のバットから強烈な打球が放たれた。一塁線を抜け、満塁の走者全員が本塁へ生還。お祭り騒ぎのベンチに、糸井は二塁ベース上でクールに「フゥ」と息をついた。1点リードの5回2死満塁。「爪痕残したろ、思って、それだけです」。チーム最年長40歳の執念が勝った。巨人鍵谷の四球の後の初球を逃さず、3点適時二塁打。終盤に反撃を受けたが、この3点が大きかった。

この日は外国人投手を3人ベンチ入りさせるため、サンズをベンチから外した。代役として「6番・左翼」で19日巨人戦以来1週間ぶりの先発起用。胸に期すものがあった。24日の巨人3連戦初戦。9回に同点に追いつき、なおも1死三塁で代打で出たが空振り三振。激闘はドローに終わった。「三振した悔しさがあるんで。あの後、部屋とかでも、じゅうたんが掘れるくらい素振りしていたんで」。ホテルの自室で一心不乱にバットを振った。「やっぱり何か爪痕を残したかったんで、勝ってよかった」とかみしめるように言った。

今季はここまで63試合に出場もそのほとんどが代打だ。矢野監督は言う。「あきらめない姿を一番のベテランが見せてくれている」。ベンチスタートが多くても、ビジターでの早出練習に汗を流し、黙々とランニングでコンディションを整える。「こういう試合で嘉男(糸井)が打って勝てるというのはチーム全体としても大きい」と指揮官は喜んだ。

これで敵地3連戦を2勝1分け。07年以来遠ざかる巨人戦勝ち越しに王手をかけた。ヒーローインタビューでチーム状態を問われ、糸井は即答した。「最高です!」。宿敵はこの敗戦で自力優勝の可能性が消滅。「強いジャイアンツに勝っていかないと頂点は取れない。みんなの目標はひとつなんで、絶対に頂点に立てるように、監督を胴上げできるように残り試合、頑張っていきます」と高らかに優勝を誓った。シーズンは残り23試合。勢いを取り戻した猛虎が狙うは首位奪還。殊勲のベテランは「全部がしびれる場面だと思う。勝ちたい。それだけ」と、頂点だけを見ている。【石橋隆雄】

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