<ヤクルト6-7DeNA>◇30日◇神宮

DeNAのドラフト2位ルーキー牧秀悟内野手(23)が、恐るべきリーダーシップを発揮した。9回、1点差に迫られた場面で、前クローザーの三嶋一輝投手(31)が登板した。三ゴロ、右飛の後、最後の打者、西浦は遊ゴロに仕留めたが、遊撃柴田の送球は2バウンドになった。これを二塁から一塁に回っていた牧がうまく処理し、ゲームセットとなった。

牧は勝利を決めると、三嶋と抱き合った。そして8歳年上の右腕に「ナイスピッチ」と声をかけた。「三嶋さんも最近苦労していたので、自分の方からひと声をかけさせていただきました」。三嶋からは「ナイスプレー」と返答を受けたという。三嶋は9月に今季5敗目を喫し、守護神からセットアッパーへと配置転換となっていた。セーブシチュエーションでマウンドに上がるのは6試合ぶり。牧は、緊迫した場面を抑えた先輩をたたえたかったのだ。

牧は攻撃中も、ベンチの最前列で声を出し、味方を鼓舞している。たとえ、自らが凡退した直後でも、すぐに気持ちを切り替えている。これには三浦大輔監督も「新人ではなかなかできないこと」と感心している。牧本人は「大学の時から凡退してもすぐに切り替えるとチームで徹底していた。自分は1年目ですけど、そういうことをやりやすいチームにいるのかなと思う。凡退しても励ましていこうと、次に切り替えていこうと思ってやっている」という。

そんな姿を球場で見つけたファンは、SNSなどで「#牧監督」というニックネームをつけている。これには牧も「ありがたいんじゃないですかね」と捉えている。ただし、将来的な指導者願望には「そんなことは全然考えてないです」。年齢を超越する味方へ鼓舞は、チームの勝利を誰より願うが故の、純粋な行動なのだ。【DeNA担当=斎藤直樹】