阪神高橋遥人投手(25)が2試合連続の完封を無四球で飾った。

中日打線を単打5本に抑えて二塁を踏ませず、わずか97球、2時間23分で料理。巨人から13奪三振でプロ初完封を挙げた前回から一変、甲子園で打たせて取る別の顔を見せた。コンディション不良で1軍昇格が9月上旬と遅れた左腕は自身3連勝で、チームを連勝に導いた。次戦では首位ヤクルトを抑え込む。

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梅野から背中をたたかれてねぎらわれ、高橋はぺこり、ぺこりと頭を下げた。マウンドで頼もしすぎる男が、かわいい後輩に戻った。「本当にうまくリードしてもらったと思います。相手の対策とか少し感じたので、その中で梅野さんとしっかり球種を選んで、後は最初3点取ってもらったのと、すごく守ってもらったんで…ありがたいです」。球団左腕では92年湯舟以来の2戦連続完封で3連勝。わずか97球で成し遂げた。

早打ちに来た中日打線を返り討ちにした。最速149キロを計測した直球と変化球の全てが決め球。キレのある球で詰まらせ、相手の体勢を崩して空振りを奪った。散発5安打で二塁を踏ませなかった。9月上旬の復帰後、4試合で計29回を投げて防御率1・55。連続イニング無失点は27に伸びた。

今年ユニホームを脱いだ先輩たちに感謝の思いは尽きない。同じ左腕の岩田稔は、入団時から12歳差を感じさせないほど気さくに話してくれた。「ケガをしてる時も、本当に前向きに、まあ気にすんな、と。すごく本当にお手本です」。鳴尾浜では中田が調子の良しあしにかかわらず、練習に打ち込む姿を見てきた。「100勝してる人があれだけみんなの前で黙々とやっている。こっちなんか下向いちゃダメだとか、本当に背中で感じさせてくれる人」。試合では中継ぎの桑原に救われた。「ピッチングのこととか教えてくれて。僕が初勝利、1年目勝った時に、クワさんに何回も助けられてるんで、すごく思い入れが深いです」。最後に歓喜の思い出で恩返しする。

優勝争いヤマ場での快投に矢野監督も目を細める。「打者に向かっていく気持ちも全てが素晴らしい投球。遥人が投げる時は絶対勝つっていう、そういうムードを作る内容を見せてくれている」。次回登板は8日からの首位ヤクルト3連戦。復帰後、唯一黒星を付けられた相手だ。「ヤクルトに最初やられているので、リベンジしたいです」。頼れる仲間とともに、向かっていくだけだ。【磯綾乃】

▼高橋遥人の2試合連続完封は、阪神では昨年9月11日広島戦、同17日巨人戦の西勇以来。左腕では、湯舟敏郎が92年9月10日広島戦、同16日広島戦で記録して以来、29年ぶり。湯舟は前田智徳、江藤智、ブラウン、小早川毅彦らのそろう重量打線を、10日4安打、16日5安打と封じ込んだ。

◆マダックス 100球未満での完封を意味する言葉として使われる。86~08年にブレーブスなどで通算355勝を挙げ、殿堂入りした大投手グレッグ・マダックスが由来。通算35完封のうち13度を100球未満で達成した。抜群の制球力で「精密機械」と呼ばれた名投手にちなみ、同じ結果を残した投手に使われる。