水を得た怪物が、最終回に輝いた。楽天安楽智大投手(24)が7年目でプロ初セーブを挙げた。

故障中の守護神松井に代わり、1点差の9回に登板。27球を要し2死一、二塁とするも、最後は151キロの直球でロッテ荻野を二ゴロに打ち取った。「今までやってきたことを信じて9回だからと守らず、攻める気持ちで投げました」。今季2度目の3日連続登板も乗り越え、試合終了とともに叫んだ。

苦しんだ。済美2年時に157キロを計測。2年センバツで772球を投じて準優勝し、14年ドラフト1位でプロ入りした。エース候補として嘱望されたが故障も度重なり18、19年は未勝利。同年10月には右肘のクリーニング手術を受けた。「結果を出さないと今までやってきたことが否定されてしまうのは仕方ない。僕には僕にしか分からない苦しさもある」と周囲の期待は痛いほど刺さった。

腹を決めた。19年のシーズン後半、救援で1軍登板し「今までは『先発しか絶対無理やろ』と。でも、1軍にいないと仕事ができない」と強く思った。球速へのこだわりは「155キロを投げたから1位になれるスポーツじゃない」と横に置き、19年オフにカットボールを磨いた。同僚の則本昂や、オフに参加した愛媛県人会では元ヤクルトの岩村明憲氏にも助言を受けた。昨季は中継ぎで27試合に登板。今季もビハインド、同点、リード時とステップアップし、54試合目で初の代役守護神を担った。

“令和の怪物”佐々木朗から打線が2得点。9回に勝ち越し、残り14試合で首位オリックスに4・5ゲーム差。「チーム、リリーバー全員で手を取り合いながら一生懸命頑張りたい」と紆余(うよ)曲折を経た怪物が、逆転優勝へ最後のピースを埋める。【桑原幹久】

▽楽天石井GM兼監督(プロ初セーブの安楽に)「緊張した顔して帰ってきたけど、そういうものを乗り越えて成長していく。安楽なくしてこういう戦い方できていない。すごく感謝しています」