ヤクルトにとって山田哲人主将の存在は大きかった。

「若い選手たちには『チームのために頑張りなさい』とあまり言わないようにしている。みんな生活がかかっているし、まずは個人でしっかり結果を残してほしい。そのための取り組み方は言うようにしてきている」と言う。個々が自分のできることを積み上げることで最高のチームにする。それが山田の考えだった。

そんな山田のキャプテンシーを周囲は好意的に見ていた。ベテラン青木は「ガシャガシャやるようなタイプじゃないから。どちらかというとスマートにやってるタイプだからというのはあるけど、本人は自分らしくやればいい。哲人は頑張ってる。すごい頑張ってる」と認めた。

後半戦、抜群の内容で勝ち続けた奥川もキャプテンに助けられた1人だ。「勝負しながら、カウントが悪くなったところでは無理せずに。(打者)『2人で1人』というふうに山田さんからも声かけもらったり、自分でもそういう意識を持って投球できる」。マウンドでの声かけは精神論にならず、具体的な状況の確認。勝負に徹する内容だった。しかも、外国人を置き去りにしない。オスナは「山田が通訳をしてくれるので大丈夫」と証言した。

高津監督は山田の他の選手との接し方を細かく観察していた。「村上は(山田に対して)友達みたいな感じで接しているんですけど、哲人は(村上に対して)きちんと一線を引きながら面倒を見ている」と分析した。時には厳しいことを言わなければならないのが主将の立場。ただ楽しくやればいいというだけではない、一線を引く行動に山田の意図が感じられた。