阪神はドラフト1位で高校BIG3の1人、高知・森木大智投手(18)を指名しました。日刊スポーツでは森木投手がプロ野球選手になるまでの軌跡を「森木がゆく」と題し、全10回連載でお届けします。第8回は、チームメートが語る森木の素顔。【取材・構成=中野椋】

   ◇   ◇   ◇

グラウンド外の森木は、盛り上げ上手な18歳だ。10月1日に行われた高知高の体育祭では、野球部同期で中軸を担った城田聖浩(きよひろ、3年)とダンスに挑戦。コロナ禍の影響で毎年恒例の応援合戦がなくなったため、城田に「学校を盛り上げよう!」と誘われ、快く応じた。

2人は、人気バンドのヤバイTシャツ屋さんの「ハッピーウェディング前ソング」に合わせて踊るユーチューバーの動画で、見よう見まねで練習した。わずか3日間で「完コピ」し、サプライズで全校生徒の前で披露。マウンドで培ってきた肝っ玉の強さが発揮されたのか? 完璧な振り付けで爆笑の渦に包んだ。184センチの森木がスカートをはいて女装し、インパクトも抜群だった。

「めっちゃウケましたね。森木はとてもフレンドリー。えらそうなところがないし、チームで一番謙虚です」と城田は言う。体育祭では100人を超すファンから写真攻めにあったが、大行列に並ぶ1人1人に丁寧に応じていたという。154キロ右腕は「愛され力」も抜群だ。

高知中から森木を知る野球部の黒田茉白マネジャー(3年)も、その人間性に救われた1人。20年秋はマネジャー1人で裏方仕事や補食作りを担っていたこともあり、仕事が追いつかない日々だった。秋季大会前に、ピリピリムードの部員と衝突したこともあったが、森木が救ってくれた。「森木に相談して『無理やったら無理って言って大丈夫だから』って言ってもらえて、気が楽になりました」と感謝する。

温厚で真面目で謙虚。そんな森木にも、弱点があるという。城田は「真面目すぎるところですね」とニヤリ。ある時は仲間の「野球辞めるわ」といううそを信じ、本気で止めようとした。投手陣に140キロを出した選手がいると聞けば、これまた本気で喜び、それが冗談だと分かれば落ち込んだ。

森木 人のミスでも自分のせいにしちゃってました。勝手に自分が落ち込むとかもありましたけど、今は切り替えもうまくできるし、頭が柔らかくなりました。

チームメートの証言から、普通の高校生と変わらない素顔が垣間見えた。(つづく)