ヤクルトが、若き左腕の快投で大きな1勝をつかんだ。

「SMBC日本シリーズ2021」第2戦は、レギュラーシーズンで完投もないプロ6年目の高橋奎二投手(24)が、日本シリーズ初登板初完封。大舞台で13年ぶり13人目の快挙を成し遂げた。大胆かつ繊細に133球を投げ、5安打5奪三振。6回以降は1安打も許さず、セ・リーグの日本シリーズ連敗を13試合でストップした。第1戦サヨナラ負けの悪夢を払拭(ふっしょく)する力投で1勝1敗のタイとし、東京に戻る。

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息をのむような投手戦は、高橋に軍配が上がった。ベンチ前で待ち受けた高津監督からぎゅっとハグされ、笑顔を見せた。第1戦をサヨナラ負けで落とし、どうしても勝ちたかった。プロ最多の133球を投じ、最高の舞台で初完封。「昨日負けてしまったので、今日は絶対に取り返すぞという気持ちでマウンドに立ちました」。

1人ずつ、真正面からぶつかった。持ち味のキレのある直球は、この日最速151キロ。力強い投球の一方で、マウンドのプレートを踏む位置を繊細に移動していた。6回は左打者の宗、吉田正には三塁寄りに立って投球。宗は内角高めの直球、吉田はカーブで連続空振り三振。右打者の杉本を迎えるとほぼ中央付近に立ち、カーブで三ゴロに仕留めた。オリックス打線の核となる3人に対し、初の3者凡退に切った。6回以降は無安打に抑え「気合で投げました。1人1人と思って打者に向かって投げたので、それが良かったのかなと思う」。硬軟織り交ぜた大人の投球に、高津監督も「立ち上がりはバタバタしたところもあったが、よく投げた。よくここまで投げられるようになった。ずっと鍛えてきた成果が出た」と評価した。

5回まで無安打投球を続けたオリックス宮城の好投も刺激になった。高橋は「宮城くんもすごい投球をしていたので、自分も先に降りるかという気持ちだった」と意地を見せた。CSファイナルステージ第1戦でプロ初完封を挙げた20歳の奥川は、日本シリーズ第1戦でも7回1失点と好投。次世代の左右エースとして期待がかかるチームメートだが「後輩には負けたくない」という気持ちは強い。

応援が、なによりの力になる。CSファイナルの期間には、大学野球の視察で神宮を訪れた龍谷大平安(京都)原田監督と再会。スーツ姿の恩師から、激励を受けた。試合中は、ピンチの場面でヤクルトファンからの拍手がグラウンドに届いた。日本一まで、あと3勝。「ここからまだきつい戦いがあると思います。ファンのみなさんの声援が選手に勇気をくれます。これからも熱いご声援お願いします」とチームを代表してあいさつ。その背中は、頼もしかった。【保坂恭子】

◆高橋奎二(たかはし・けいじ)1997年(平9)5月14日、京都府生まれ。龍谷大平安では2年のセンバツで優勝するなど甲子園に3度出場。15年ドラフト3位でヤクルト入団。今季公式戦は14試合で4勝1敗、防御率2・87。11日のCSファイナルステージでは巨人相手に6回無失点で勝利投手。178センチ、73キロ。左投げ左打ち。今年1月に元AKB板野友美と結婚。今季推定年俸1450万円。

▽オリックス吉田正尚(高橋奎二について)「投手有利なカウントでどんどん攻められた。真っすぐに勢いがあって、良い投手でした」

▽龍谷大平安・原田英彦監督(教え子のヤクルト高橋の勇姿を現地観戦)「昨日の負けがあったので、大変なプレッシャーがあったと思います。試合前に僕の姿を見つけてあいさつしてくれたから余裕はあるなと思っていましたが、これほどの投球をするとは。本当にメンタルが強くなったなと感じました。プロ野球選手にとって最高峰の舞台に立って、涙が出ました」

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