広陵の「ボンズ」の打球は、花巻東の一塁、佐々木麟の頭上はるか高く、右翼ポール際へ飛び込んだ。1点を追う2回に2得点で逆転し、なお2死一、二塁。4番の真鍋慧(けいた)内野手(1年)は「芯で捉えられました」と、カウント3-1からスライダーを引っ張った。内寄りの球に腕をたたみ、切らすことなくスタンドイン。高校通算10号だ。中井哲之監督(59)も「いい場面で、すごくいいバッティング」と認める一打だった。

およそ150キロのスイングスピードは、中学生の頃からの鍛錬の成果だ。重めのバットでスイングを重ね、飛距離を伸ばした。名門で、1年生ながら4番に座る。そんな真鍋に、中井監督がつけたニックネームは「ボンズ」。メジャー歴代最多762本塁打のバリー・ボンズからだ。「広角にホームランが打てるバッターになってくれたら」という期待が込められている。

同じ1年生で、同じ一塁手で、同じ左打ちの佐々木麟を「同学年なので、少し意識します」と真鍋。その佐々木麟も8回、同じく右翼へ一時同点の3ラン放り込んだ。ただ、激しい打ち合いを制し、決勝に進んだのは広陵だ。初優勝へ、ボンズが4番の仕事を続ける。【古川真弥】

▽中日米村アマスカウトチーフ(広陵・真鍋について)「インコースをさばけるのは評価の1つになる。うまくさばいていた。スイングスピード、タイミングの取り方、うまく対応できている証拠。スーパーになるのに体はいい要素です」

▽広陵・川瀬虎太朗主将(同点とされた直後の8回、決勝の適時三塁打)「後ろにつなごうと思って打席に入りました。全員に『諦めるな。大丈夫だ。自分たちの野球をして、絶対に勝つぞ』と言っていました」