原材料費の高騰であらゆる商品の値上げが続く中、主力商品の値下げを決めたメーカーが表れた。野球用品メーカー「フィールドフォース(FF)社」(東京・足立区)で、10万台を売り上げる「スウィングパートナー」のリニューアルを機に、6380円から5980円(税込み)に初めて値下げした。ティースタンドの先端にシリコン製のダミーボールを装着した同製品は、インパクトのポイントと打感を確認しながら繰り返し素振りができる。一部で「素振りの相棒」と呼ばれるアイデア商品で、少年野球指導の定番になっている。

また、ボールを拾わなくても繰り返しティー打撃ができる「オートリターン・フロントトス」は3300円の大幅値下げで9900円(税込み)に改定する。こちらも、発売から安定して売れ続けるFF社の代名詞とされる商品だ。

もともと、利益を抑えて低価格を目指してきたFF社は、大型スポーツ店でも値下げされることが少なかった。今回、製造から流通まで、あらゆる工程を見直すことで値下げに踏み切ったのは、高額化する野球用品への危機感からだった。

最近の野球用品は、高品質、高性能が進んでいる。大衆スポーツのはずの軟式のバットは、硬式より高額が主流になり、大人用で5万円、少年用で4万円に迫るものが登場した。もちろん、高額商品ばかりではないが、野球は必要な道具が多いとあって、学童、少年野球の選手が経済的理由で断念するケースも増えている。吉村尚記社長は「このままでは野球は金持ちのスポーツになってしまう。このようなご時世だからこそ、あえて値下げに挑戦し、日本の国技である野球を、裾野から盛り上げていきます」と意気込みを語る。

ユニークな練習用具に定評のあるFF社だが、東京・足立区にグラブ工房を構え、高品質でオーダーにも応えるグラブの製造、販売も行っている。今年は初心者にも柔らかく、捕りやすいグラブを開発して、8月と12月に1000個無料プレゼントを実施した。

一方でプロ野球選手との契約には着手しないのは、商品の開発費や契約金を負担することで、一般の商品が高額化するのを避けるためだという。そのぶん、学童、少年野球を支援することで、野球人口の拡大を目指している。野球メーカーの「下町ロケット」とも呼ばれる同社の願いは、新年に向けて新たなスタートを切った。