全国屈指の名門で一旗揚げるぞ! 仙台6大学野球の東北福祉大・綱脇慧投手(4年=花咲徳栄)が、社会人野球のENEOS(横浜市)に入社が内定したことがわかった。高校時代に成し遂げた「甲子園優勝投手」の看板をひっさげて大学に進学したが、苦難の連続。紆余(うよ)曲折があった大学の4年間を糧に、目標の「プロ入り」を視野に入れ、チームの勝利のために身を粉にする。

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綱脇は、社会人野球屈指の名門・ENEOSに舞台を移し、再スタートを切る。「都市対抗、日本選手権優勝を目指したい。チームのピースとなれるように、しっかり活躍していきたい気持ちです」と意気込み、2大タイトル制覇の一翼を担う覚悟だ。

再び栄光を-。5年前。花咲徳栄(埼玉)で3年夏に「甲子園優勝投手」となり、東北福祉大へ進学した。いきなり、1年春でリーグ戦デビューを飾ると、2年秋にはノーヒットノーランを達成。順調にキャリアを積み上げていくかに思えたが、度重なる故障やコロナ禍で3年春以降はリーグ戦1試合のみの登板に終わった。「紆余曲折の大学野球だった。入学当初は4年後のプロ入りをイメージしていたけど、周りの選手のレベルも高く、実力だったり、思うような結果を残すことはできなかった」と振り返った。同期にはオリックス・ドラフト1位指名の椋木蓮投手(22)をはじめ、4選手がプロ入りを決めた。綱脇は「素直にうれしかった。自分も『頑張ろう』と大きな刺激にもなった」と発奮材料とし、今後の飛躍の糧とする。

3年秋のフォーム改造が「吉」と出た。上半身から下半身主導に変更し、投球動作を速くした効果が昨春に表れた。自己最速を3キロ更新する143キロをマーク。スピード以上に球威が増し、ツーシーム、カットボールなど5種類の変化球がより生きるようになった。「フォーム変更が裏目に出たこともあったけど(今のフォームは)しっくりしている」。この決断が4年春のオープン戦での好投につながり、社会人野球に活路を見いだすきっかけとなった。

ひと言で言えば「伸び悩んだ」のかもしれない。だが、杜(もり)の都で過ごした4年間と、大塚光二監督(54)への感謝は尽きない。綱脇は「監督やコーチは常に選手のことを考えて、気にかけてくれていた。こんなに良い指導者の下で野球ができて本当に良かったと思います」。

目標はプロ入り。でも、それよりも大切にしたいことがある。「自分を取ってくれたチーム(ENEOS)に恩返しがしたい。1日1日を無駄にせず、尽くしたい気持ちが一番あります」。

幾多の逆境を乗り越え、たどり着いた新しいステージで右腕を振り、その先の道を切り開いていく。【佐藤究】

◆綱脇慧(つなわき・すい)1999年(平11)5月11日生まれ、東京都港区出身。本村小1年時に本村クラブで野球をはじめ、高陵中学では東京城南ボーイズでプレー。同3年春夏に全国大会出場。花咲徳栄では2年春に初ベンチ入り。甲子園は2年春夏、3年夏の計3度出場。東北福祉大では1年春からリーグ戦デビュー。リーグ通算5試合に登板。家族は両親と弟。181センチ、84キロ。右投げ右打ち。趣味はレコード集めとDJ。好きなプロ野球選手は日本ハム杉浦稔大。