12球団のキャンプは、少しずつ実戦モードに入りつつある。各球団、どんな新戦力が現れるか。ロッテでは右腕の森遼大朗投手(22)への期待が高まる。育成選手として4年間を過ごし、昨年12月に支配下契約を勝ち取った。オンラインで活躍への思いを尋ねた。【取材、構成=金子真仁】

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4年間も背番号「123」を付けたから「62」が実に初々しい。ただ、A組(1軍)でアピールを続ける森本人に背中は見えない。

「やっとここまで来たな~っていう感じです。でも、去年までと基本的にはほとんど何も変わってない気はします」

黙々と練習する。派手なタイプではない。大きなことは言わずに、実直に努力を重ねる。どちらかというと口下手だ。

昨年12月9日、球団と支配下契約を結んだ。「一番は両親に伝えたいです」と言い、大学進学ではなく、プロ野球の育成契約を選択させてくれたことへ、感謝の思いを寄せた。

年末に宮崎・都城に帰省した。友人が宮崎市内まで迎えに来てくれて、あいさつ回りを済ませてから実家に戻った。「ただいま」「おかえり」。いつも通りのやりとり。面と向かうと、照れくさい。

「なかなか、ちゃんと言えなかったですね」

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マウンドでは堂々の振る舞いで飛躍した。昨季はイースタン・リーグで10勝。誰もが驚くような球はないものの、日本ハム戦では清宮、中田、大田の中軸から三振を奪った。美馬学投手(35)直伝のフォークで幅を広げたのが大きい。このオフも美馬の自主トレに同行した。

「僕は体重移動がちょっと早くて、前へ行こうとする部分が大きかったので。どう我慢して、どこで力を入れるか。美馬さんにも『前に突っ込むな』と言われましたし、いろいろな引き出しをいただきました」

大学野球に進んだと同じだけの歳月を費やした。多くの支えがあり、今に至る。今月8日のシート打撃でも、カウント1-1からながら3奪三振。位置づけは、大卒の即戦力右腕に等しい。それでも派手な言葉は出ない。

「できれば先発で初勝利を挙げられればいいですが、そこは自分の置かれた場所で頑張りたいです」

謙虚な思いを口にしつつ、周囲の期待は高まる。帰省時には大仕事もあった。地元都城から「みやこんじょ大使」を委嘱された。球界では中日柳、巨人戸郷も同大使を務めている。県外出身ながら、オリックス山本も都城高の出身だ。

「うれしいですし、本当に光栄なんですが、まだ1軍で投げてないですし、活躍しているところが全然違うので…。これから頑張って、何とか肩を並べられるくらいの人間にはなりたいなと思います」

選手、ではなく「人間」とするところにも人柄がにじみ出る。恩返し。口数は少なくとも思いは強い。2月下旬には宮崎でオリックス、ソフトバンクとの練習試合3試合がある。

「やっぱり、その試合で投げてみたい気持ちはあります。高校時代も(その球場で)投げたこと、ありますし」

1年前の今ごろはキャンプ早々の故障で出遅れ、シーズン中の昇格チャンスも巡り合わせがなかった。故郷で好投し、今年こそ自分の流れに。「まずは初勝利を挙げられるように」。入団5年目、昨季盗塁王の和田康士朗外野手(23)は育成同期入団にあたる。負けぬよう、森遼大朗の名を売る1年にしたい。