巨人ドラフト1位の大勢投手(22=関西国際大)が自己最速の「158キロ」をマークした。6日、オープン戦の日本ハム戦(札幌ドーム)に3番手として登板。近藤の4球目に自己最速を1キロ更新するなど、平均155・6キロの直球を軸に3者凡退に抑えた。実戦2試合で2回を完全投球と、評価は急上昇。大学時代に速球に磨きを掛けてプロへの扉を開いた剛腕が、開幕1軍を視界にとらえた。

【関連記事】巨人ニュース一覧

大勢が剛速球でド肝を抜いた。7回2死、東京五輪代表でもある日本ハム近藤を直球で押した。初球156キロで空振り。2つボール球を挟んだ4球目。出し惜しみはない。右足のかかとをあげた野性味あふれる大胆なフォームから全体重を指先に込める。うなりをあげた1球。自己最速の158キロをたたき出した。

関西国際大時代に計測した157キロを1キロ更新も「何キロとかは、今はこだわってない。空振りが取れた真っすぐを、どれだけコンスタントに投げられるか」と冷静だった。

厳しい現実を突きつけられた西脇工(兵庫)時代から最速が11キロアップした。147キロ右腕としてプロ球団から注目を浴びた当時。日本ハムも興味を持ってくれた球団の1つだった。いくつかの名門大へ進学の道もあったが、プロ志望届を提出。可能性が少ないことは分かった上で、プロになると言い続けた。

4年と4カ月前の運命の日。校長室で指名を待った。歓喜の瞬間を捉えようとテレビ番組から密着取材も受けていた。しかし、刻々と時間は過ぎていく。高まる期待と不安とカメラの前で、ドラフト指名されることはなかった。白紙になった進路は、なかなか決まらず心をかき乱された。

助け舟を出してくれたのが、地元・関西国際大の鈴木英之監督(54)だった。「どこでどうするか全然決まってなかった。指名漏れして入って、絶対プロ野球選手になろうと思ってやってきた」。大学時代、コロナ禍でアピールの場が減少。右肘を疲労骨折し、大卒からのプロ入りを諦めかけた時もあった。暗い影を落とした日々も、マイペースに、がむしゃらに、明るい光をたぐり寄せてきた。

札幌ドームの1万人超の視線を浴びても、根本は変わらない。「左打者の内角に投げきれなかった」と反省し、またレベルを上げる。底知れない可能性を秘めた野性味あふれる剛腕ルーキーが、道なき道を猛進する。【小早川宗一郎】

◆プロ野球の球速メモ 最速は昨年8月13日にビエイラ(巨人)がマークした166キロで、日本人投手の最速は16年のCSで165キロ、同年の公式戦で164キロを計測した大谷(日本ハム)。公式戦で160キロ以上を記録した日本人投手は大谷、藤浪(阪神)ら7人。巨人では槙原が84年に当時の日本最速となる155キロ、沢村が157キロを記録しているが、160キロを出した日本人投手はまだいない。

▽巨人原監督(大勢について) 頼もしい限りですよ、それはね。(起用法は)役割分担、パーツというか、そういうものはまだ決まっていないんでね。よく話し合いながら結論が出れば、しっかり伝えたいなと思います。

▽巨人丸(3試合連続1番で先発し、2打席目から2本の二塁打) 自分の間合いでスイングできたと思いますが、トップバッターとして最初の打席でチームに勢いをもたらす事ができなかったのは反省したい。

▽巨人大城(8回2死、代打で日本ハム堀から右翼席へ1号ソロ) 2ストライクと追い込まれたので、粘り強くというイメージでいった。うまく内角のボールに反応できた。結果の世界なのでしっかりこだわってやっていきたい。