あるぞ、開幕1軍! 阪神ドラフト4位の前川右京外野手(18=智弁学園)が鮮烈な1軍デビューを飾った。甲子園の巨人戦に「7番左翼」で先発。7回に右前へ初ヒットを記録するなど2安打。球団の高卒新人では74年掛布雅之以来のマルチ安打となった。矢野燿大監督(53)は15日からのソフトバンク2連戦(ペイペイドーム)に帯同させることを明言。昨夏の甲子園を沸かせたスラッガーが首脳陣の心をさっそくつかんだ。

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「智弁対決」で盛り上がった昨夏の甲子園から半年後、タテジマの前川が聖地で躍動した。巨人戦に「7番左翼」で先発。7回1死一塁。巨人戸田にカウント0-2と追い込まれても落ち着いていた。3球目の外角フォークに反応。右前に運びプロ初安打。9回2死には、巨人直江のフォークをすくい上げて、右前へ落とした。「球場の歓声がすごくて、うれしかったです。自分がやるべきことはしっかり今日はできたかなと」。虎の高卒ルーキーがマルチ安打で鮮烈なデビューを飾った。

智弁学園では高校通算37発。昨夏は2本塁打を放ち、甲子園準優勝に貢献。将来性十分のスラッガーは、いわば「顔見せ」の意味合いで伝統の一戦に招集された。試合前には先輩の岡本和から「緊張すると思うけど、思い切ってバットを振ってこいよ」と声をかけられ、気持ちが楽になった。持ち味のフルスイングで結果を残し、首脳陣の心をつかんだ。矢野監督は「しっかりバットを振れるっていうのは前川の大きな魅力だと思うんで。もっと見たい。純粋に見たいよね」と絶賛。15日からの福岡遠征にも「連れていく」と即答した。

プロ入り後の道のりは決して平たんではなかった。高知・安芸の2軍キャンプでは、プロ初実戦となった四国IL・高知戦で左中間フェンス直撃の二塁打を放ち、アピール。しかし、キャンプ終盤にチーム内で新型コロナ陽性者が続出し、実戦が中止。練習も取りやめとなった。「1日でもバットを振らない日は気持ち悪くて寝られなかったりする」と話していた前川にとって、苦しい期間だった。4日の練習再開後に感覚を取り戻すため、鳴尾浜でバットを振り込んだ。11日教育リーグ・中日戦で4番に座り、3安打で1軍デビューの機会を自らの力でつかみとった。

昨年12月の新入団会見で、前川は「開幕1軍」と色紙に力強く書いた。「やるからには目指してますし、やっていかないといけない。グラウンドに立ったら年齢は関係ないと思うので、堂々とプレーしていけたらと思います」。高卒1年目は関係ない。18歳の若虎が新風を吹かせる。【三宅ひとみ】

▽阪神井上ヘッドコーチ(前川について)「僕的には楽しみな選手、面白みのある選手、ワクワクする、何か起こしてくれるんじゃないかっていう。オープン戦でも1軍の試合初めてにもかかわらず、そこは堂々としてる。しゃべってみるとあどけないところも見えるっていう、これもまたいいなと思うんだけど。監督も本当面白いやろ、楽しみやろって言われてたので、それをなるほどねってうなずける選手」

▼オープン戦初出場の高卒ルーキー前川が2安打を放った。今季のオープン戦で安打を放った高卒新人は池田(オリックス)松川(ロッテ)有薗(日本ハム)に次いで4人目。1試合2本以上のマルチ安打を記録した高卒新人は21年3月7日秋広(巨人=2安打)以来で、今回のようにオープン戦初出場では18年3月18日村上(ヤクルト=2安打)以来になる。阪神高卒新人の安打は20年3月8日井上以来となり、マルチ安打は74年3月24日掛布が近鉄戦で4打数4安打して以来、48年ぶり。

◆前川右京(まえがわ・うきょう)2003年(平15)5月18日生まれ、三重県出身。外野手。智弁学園では1年夏、3年春夏と甲子園に出場し、3年夏は準優勝。高校通算37本塁打。21年ドラフト4位で阪神入り。契約金4000万円、年俸500万円(いずれも推定)。176センチ、88キロ。左投げ左打ち。