ソフトバンクが新庄BIGBOSS率いる日本ハムを破り、リーグ唯一の開幕カード3連勝を決めた。中盤に逆転を許す悪い流れを断ち切ったのが、新加入の藤井皓哉投手(25)だ。5回1死満塁から追加点を許さぬ投球で、味方の逆転を呼び込み、移籍後初勝利を挙げた。広島戦力外、独立リーグを経験した苦労人の右腕がチームを救った。

【写真たっぷり詳細ライブ】27日のソフトバンク-日本ハム戦

窮地でのマウンドだったが、藤井の覚悟は決まっていた。5回、1点を勝ち越されてなお1死満塁。「昨日ふがいない投球だったので、やってやろうという気持ちでした。場面は考えずにマウンドに上がりました」。前打席で適時二塁打のヌニエスを直球で見逃し三振。続く佐藤も三ゴロに打ち取り、追加点を許さなかった。

その裏に味方が逆転すると、6回も3人斬りの投球で流れを渡さなかった。藤本監督も「いい投球をして、流れをこっちに持ってきてくれましたね。マウンドでも落ち着いているし、またいいところでも投げられるんじゃないかな」とたたえる投球で、移籍後初白星をつかんだ。

15年に広島でプロ野球人生をスタート。だが通算14試合の登板で、20年オフに戦力外通告を受けた。昨年は独立リーグの四国IL・高知でプレーし、昨年12月にソフトバンクに育成入団した苦労人だ。そこから一気のアピールで、支配下登録と開幕1軍をつかんだ。

自身でも「自分の想像をはるかに超えるスピードでここまで来ている」と振り返る約3カ月間。「開幕前は、自分の気持ちが追いつかないというか、そういうところもあった」とフワフワしていた心を引き締めたのが、26日の移籍後初登板だった。4点リードの9回を任せられたが、1点を失い、2死一、三塁としたところで降板した。「打たれたけど、ここでやっていくということを感じられた。腹をくくっていくしかない」と覚悟を決めた。

NPBでの白星は広島時代、18年のプロ1勝目が唯一だった。そのときの相手も日本ハム。「4年も空いたので、初勝利のような感じです」と、ウイニングボールを手につぶやいた。4年ぶり通算2勝目は、新天地での門出の白星になった。【山本大地】

◆藤井皓哉(ふじい・こうや) 1996年(平8)7月29日生まれ、岡山・笠岡市出身。小3時に大井若草スポーツ少年団でソフトボールを始める。おかやま山陽では2年秋からエース。15年ドラフト4位で広島入団。通算14試合登板で1勝0敗、防御率7・94。20年オフに戦力外となり、昨季は独立リーグの四国IL・高知でプレー。22試合に登板し、2完封を含む3完投で11勝3敗、防御率1・12。昨年12月にソフトバンクと育成契約を結び、今年3月22日に支配下登録された。今季推定年俸650万円。183センチ、89キロ。右投げ左打ち。

 

◇記者メモ◇

藤井がソフトバンクと育成契約を結んだ理由に、思わず耳を疑った。

「ソフトバンクの育成であれば、他球団の支配下よりもチャンスがあると思った。断る理由はなかったです」。

ソフトバンクは育成選手が多く、支配下に上がるための争いが激しい。独立リーグからNPB復帰を目指す立場だっただけに、この発言には驚いた。

確固たる理由があった。ソフトバンクは過去に、エース千賀や石川を育成選手から球界を代表する投手に育てた。野手でも侍ジャパンに選出された甲斐や周東、主力になった牧原大やリチャードがいる。藤井は「確かに支配下契約がベストだけど、ソフトバンクは育成でもチャンスがある。実際に育成出身で結果を残している選手はたくさんいるじゃないですか。その育成環境と、何より育成出身の選手が多いことにひかれた」。目指したのは、ただのNPB復帰ではない。主力にまで成長する道だった。

この日の好リリーフで、再スタートとなる1勝。2年連続の開幕3連勝を呼んだ。150キロ超えの直球と、キレのあるフォークは一級品。どん底を経験した右腕が、新たな「育成の星」になる。【ソフトバンク担当=只松憲】

 

○…嘉弥真、又吉、モイネロの救援陣が7回以降を無安打に封じ込んだ。寝違えのため開幕2戦を欠場した嘉弥真が7回に登板。1死から近藤に四球を与えたが後続を連続三振。8回を又吉が3人で切ると、モイネロが代打今川、万波を150キロ超の直球で連続三振、石井を右飛に仕留めた。今季初登板で初セーブを挙げたモイネロは「自分の仕事をするという事だけを考えてマウンドに上がりました。いい投球だったと思う。チームの力になれてよかった」と笑顔で投球を振り返った。

 

○…栗原が2戦連続アーチを含む猛打賞の活躍で打線をけん引した。1点を先制した直後の初回2死一塁。吉田のフォークをライナーで右翼線のテラス席へ2号2ラン。「打球が低かったので入るかなと思ったけど、一番狭いところに入ってくれた」。4回には右中間二塁打、6回にも右前打を放った。開幕から5番に座り打率4割5分5厘の活躍。オープン戦中にヤクルト村上と打撃談義。グリップの持ち方や左手の使い方など好感触を得るきっかけとなった。「ヒットが出ているのが一番いい」と納得顔だった。

 

▽ソフトバンク中村晃(5回に今季初ヒットとなる中前打)「四球も選ぶことができているし、とにかく今シーズン1本目の安打を打つことができてよかったです。3連勝という最高のスタートがきれたし、次のカードもいい形になるように、もう1度、気を引き締めていきたい」

 

▽ソフトバンク杉山(先発も5回途中4失点で降板し)「反省点しかありません。初回から先制してもらったのに、簡単に追いつかれてしまった。野手のみなさん、中継ぎのみなさんに本当に申し訳ないです」

 

▽ソフトバンク三森(5回に適時三塁打)「拓さん(甲斐)がきっちりバントで送ってチャンスでまわしてもらったので、絶対にランナーを返そうと強い気持ちを持って打席に向かいました」

 

▽ソフトバンク甲斐(6回に今季初安打となる適時二塁打)「チャンスだったので、何とかしたいという気持ちだけでした。今シーズン初ヒットが貴重なタイムリーとなって良かったです」