東海大が小松勇輝主将(4年=東海大相模)の涙の一打で、サヨナラ勝ちをおさめた。同点の9回2死二塁、日体大の最速151キロ右腕・勝本樹投手(4年=明石商)の直球を振り抜き、打球は前進守備の左翼手を越えた。「昨日の試合で足を引っ張っていたので、何とか打ってやろうと思ってました」。笑顔でナインの元へ駆け寄り、喜びを分かちあうと、表情は一転、目を真っ赤にした。

喜びがあった。昨春5月のリーグ戦、右膝前十字靱帯(じんたい)断裂の大けがを負った。秋は公式戦未出場。長いリハビリ生活の末に迎えた春だった。「試合に出られて『野球が出来るだけでありがたいんだな』って思ったんです」。久しぶりの野球が楽しかった。

悔しさがあった。9日の試合では、自らの失策が原因で失点を許していた。試合後、観戦していた東海大相模時代の恩師・門馬敬治監督と偶然、遭遇した。「なんか表情が暗いぞ。もっと明るく、生き生きとプレーしないと」。ハッとする言葉をかけられた。

初心を取り戻し、帽子の裏にその言葉を刻んだ…つもりだった。書いた言葉は「明るく“生々”と」。漢字を間違えた。小松は「これ昨日書いたんですけど、漢字違いますよね」と、帽子のつばを見て笑った。

試合中はつばを見返し、恩師の言葉を思い出した。そして出た一打。「暗くならず、明るくプレーしました。最後にああやって結果が出て、うれしいです」。大けがを乗り越えて迎える学生野球最後のシーズン。明るく、“生々と”走りきるつもりだ。

◆小松勇輝(こまつ・ゆうき)2000年(平12)10月7日、神奈川県藤沢市生まれ。湘南ボーイズから東海大相模に入学。18年のセンバツでは主将として4強入りに導く。172センチ75キロ。50メートル走6秒4。遠投100メートル。趣味はアニメ鑑賞。好きな有名人は声優の佐倉綾音。