侍ジャパン栗山英樹監督(61)は今、何を考えているのか? プロ野球はレギュラーシーズンの約3分の1を終え、24日からは交流戦がスタート。本来なら来春WBCへ向け、代表監督としてプロの現場視察も重ねたいところだが、コロナ禍もあって控えている。日課のテレビ中継チェックから、最強の布陣構築へ向けた考えを深めている。【取材・構成=古川真弥】

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栗山監督は本音を隠さなかった。今、プロの視察に行っても、コロナで見たい選手がいなかったり、いても復帰したばかりで本調子でなかったりする。「選手に意識させてしまう。邪魔するだけ」と、視察は交流戦明けまで我慢。そんな状況に「もどかしさは、すごくあるね」と打ち明けた。

だが、逆風だからこそ、出来ることもある。“考える”ことだ。

栗山監督(以下栗) 自分ならどう指示するか、実際に起きることを見ながら考えさせてもらう。現場に行ってないから、何でそうなるか、分からない。こうなのかなあと想像する。深く。現場の監督だと試合が始まるから、どこかで考えを切らないといけない。でも、こっちは自分の試合じゃない。思ったのと違ったら「良かった。俺じゃなくて」なんて(笑い)。

中継のチェックが日課。昨季まで10年間、日本ハムを率いた。パの選手は、おおよそのイメージができている。セ中心に「ジャパンに選ばれる確率が高いピッチャー同士の対決。もしくは、ポジション関係なく代表で一緒にやる想定をし得る選手で、今、見ておきたい選手」の試合を見ることが多い。

そこに考えるヒントがあった。投手が打席に立つセの試合から「3イニングのうち1イニングは点が入りにくそうなイメージ」を感じた。8、9番に打力が劣る捕手、投手と続けば、どうしても打線はつながりを欠く。WBCはDH制だが、セの試合を見ることで逆転の発想が生まれている。

栗 日本のピッチャーはいいと想定すれば、接戦になる。それなら「下位にいいバッターを置いて、下位につながりをつけた方が、いいのかな」と思ったり。

あえて下位打線にも厚みを持たせる作戦。一発勝負は結果が全て。セオリーと異なる手も排除しない。

午前中はメジャー中継もチェックするが、そこにも考えるヒントがある。

栗 (エンゼルス大谷)翔平や(ブルージェイズ菊池)雄星、日本の選手を見てるよ。でも、どちらかというと、全然知らない(他国の)ピッチャーを見ている。「WBCに出てきたらやばいじゃん」て。155キロが、あんなに動く。「強く振りすぎるバッターはきついかも。足を使える選手だけでいった方が勝ちやすいのかな」と思ったり。

17年の前回大会は、準決勝で米国投手陣の強く、かつ動くボールにてこずり、1点差で涙をのんだ。力勝負よりスピード勝負の日本野球を仕掛けるべきか-。

栗 ギリギリまで決めるべきじゃない。最後は情報がそこまでなくても決めないといけない。その状況でベストなモノを考える。

考え続け、深めた先に、最強の布陣を張る。