「真夏の大冒険」の続編とは-。阪神、ロッテで活躍した鳥谷敬氏(40=日刊スポーツ評論家)がアスリートに迫る「鳥谷敬VSパリ五輪の星」。第2回は東京五輪スケートボード女子ストリートで日本選手最年少の金メダルを獲得した西矢椛(14=ムラサキスポーツ)と26歳差対談です。5児の父でもある元スター遊撃手が、親子ほど年が離れた中学3年生に直撃。一躍「時の人」となった後の悩みや日常、未来に迫りました。【取材・構成=佐井陽介】
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鳥谷 初めまして。鳥谷と言います。野球とか阪神とか、あまり知らないですよね?
西矢 はい…(苦笑い)。阪神…名前は知っているんですけど…。
鳥谷 知られていないのに、何をしに来たんだって話ですね(笑い)。普通のおじさんがスケボーをさせてもらいに来ました(笑い)。早速ですが、東京五輪から10カ月近くがたちました。金メダルを取って変化はありましたか?
西矢 結構イベントに呼んでもらえるようになって、いろんな県に行けるようになりました。食べるのも好きなので楽しいです。スケボーはちょっとやんちゃなイメージもあったと思いますけど、そこを少しずつ変えられているのもいいことかなと思います。
鳥谷 有名になってしまって、学校とかで大変じゃなかったですか?
西矢 同学年の人は変わりません。でも、金メダルを取った時は中学2年だったんですけど、中学3年生の人が寄ってくるようにはなりました(笑い)。環境の変化は嫌ではないですけど、恥ずかしいです。たまにパークで勝手に写真を撮られたりもして…。
鳥谷 有名になって良かったですか?
西矢 いや、そんな…。
鳥谷 その気持ち、よく分かります(笑い)。五輪から背は伸びましたか?
西矢 はい。150センチ前半だったのが、今は158センチになりました。
鳥谷 スケボーする上で背が高い方が有利だったりするんですか?
西矢 多少、大きい方がいいかなと思います。海外のコンテストではレールなどのセクション(道具)がめちゃくちゃ高くて。背が高ければセクションが小さく見えるので。
鳥谷 じゃあ、これから175センチぐらいまで行きましょう!
西矢 はい…(笑い)
鳥谷 練習はどれぐらいのペースでやっているんですか?
西矢 週5回の練習をしていて、1日3時間ぐらいです。6歳から続けています。
鳥谷 もっと毎日休みなくボードと友達でいないといけないのかと思った(笑い)。うちの子供たちとなんら変わらないね。スケボー以外での楽しみは?
西矢 友達と映画を見に行くことです。ディズニー系が好きです。最近はコソコソ「あれ西矢椛じゃない?」って言われることもあるんですけど、映画館でバレたことはないです。
鳥谷 海外のスケボー選手の動画を見て勉強したりもしますか?
西矢 はい。インスタとかは見ます。
鳥谷 技を盗んで?
西矢 盗む…(笑い)
鳥谷 2年後にはパリ五輪があります。明確な目標はありますか?
西矢 今はコンテストではない街中で滑るストリートでも活躍したいです。ストリートは他の選手と争って採点されるものではなくて、世の中にビデオを発信して見てもらうものです。
鳥谷 技とか芸術的な部分を見て喜んでもらいたいんですね。では必ずしもパリ五輪に照準を合わせているわけではないんですね。
西矢 もし出られたら楽しめると思います。楽しく滑った結果、金メダルを取れたらうれしいです。
鳥谷 スケボーはあくまで楽しむ中に競技があるんですね。自分は正反対。野球をやっている時はもう仕事、仕事で…。大学生から数字を追い始めて、プロ野球選手になってからは毎日点数をつけられる感じもあって、嫌になってしまった部分もあった。そういう意味では、ぜひ楽しいという感情をずっと大切にしてほしいなと思います。
西矢 スケボーは海外の人と仲良くなれるし、コンテストでも1人1人スタイルが全然違うので楽しいですよ。40歳とかで辞めていく人が多いけど、鳥谷さんは今日動きを見させてもらってもすごかった。今から始めてみませんか?(笑い)
鳥谷 えっ!? じゃあ始めてみようかな(笑い)。家に子供のボードがあるので、まずは道を滑るところから始めてみます(笑い)
◆「13歳、真夏の大冒険」 東京五輪で西矢が金メダルを獲得した時の名実況。西矢が5回目のトリックを成功させた際、NHKの中継で倉田大誠アナウンサー(フジテレビ)が「決まったー! 13歳、真夏の大冒険! 」と声を張り上げた。このフレーズは早速ツイッターでトレンド入り。21年の流行語大賞ノミネート30語にも入った。
◆スケートボード 米国を中心に発展し、若者に人気がある。東京五輪の新競技として採用されストリートとパークが実施された。ストリートは階段や手すりなど街中を模したコース、パークはコンビプールと呼ばれるボウルをふせたようなコースで争う。両種目ともトリック(技)の難度、独創性などを競う採点競技。ジャンプやスライド技の多いストリートに対し、パークは回転技が多く、スノーボードのハーフパイプに近い。
◆西矢椛(にしや・もみじ)2007年(平19)8月30日生まれ、大阪府松原市出身。2歳上の兄の影響で5歳からスケートボードを開始。小学校6年だった19年、世界最高峰のXゲームで準優勝。21年の世界選手権で準優勝。東京五輪では13歳330日で金メダル。サッカーはC大阪、お笑いは千鳥のファン。ニンテンドースイッチで好きなゲームは「マリオカート」。愛称は「もみちゃん」。158センチ、48キロ。
◆鳥谷敬(とりたに・たかし)1981年(昭56)6月26日生まれ、東京都出身。聖望学園3年夏に甲子園出場。早大を経て03年ドラフト自由枠で阪神入団。1939試合連続出場はプロ野球歴代2位。17年に通算2000安打を達成した。19年オフに阪神を退団し、ロッテで2年間プレーして現役引退。13年WBC日本代表。11年最高出塁率、ベストナイン6度、ゴールデングラブ賞5度。180センチ、79キロ。右投げ左打ち。



