待ち望んだプロ野球の球音が、快晴の岩手・陸前高田市で響いた。楽天は4日、高田松原運動公園第一野球場でイースタン・リーグ巨人戦に臨んだ。田中貴也捕手(29)が6回に「球場プロ野球初打点」となる先制適時打を放ったが、1-5で逆転負け。それでもナインは「楽天イーグルス 奇跡の一本松球場」と命名された球場で激励の拍手を背に戦い、会場を沸かせた。

海から数百メートル離れた球場を一打で盛り上げた。6回1死二塁。初球の変化球を中前に運び、二走黒川が生還。この日一番の歓喜をもたらした。「ちょっと(バットの)先だったんですけど、抜けたかなと思いました。(初打点は)すごく光栄」とほほを緩めた。以降は同点の9回に4失点。終盤に突き放され、1勝を逃した。「11年前は東北にいなかったですけど、映像を見て、つらい思いをされていると分かっていたので何とか勝ちたかった」と悔やんだ。

12年越しの思いが乗った試合だった。同市は11年8月、2軍戦の開催を予定していたが、東日本大震災で中止。その後、球場を再建したものの、20年はコロナ禍で開催できず。この日は3119人の観客が集まり、戸羽太市長(57)は「市民にとっては11年の思いが、やっと実現した試合。これだけのたくさんの方が来てくださった」と笑みを浮かべた。

連敗では終われない。今日5日は宮城・南三陸町で同じカードが行われる。「明日はしっかり勝てるように、一生懸命プレーして少しでも勇気づけられるように。僕たちは野球でかえすことしかできないので、そういう思いで明日も頑張りたい」と田中貴。駆けつけた観客の期待を背負ってグラウンドに立つ。【相沢孔志】

○…試合前には楽天から陸前高田市へ、選手らのサインが入ったパネルが贈られた。戸羽市長は「イーグルスの皆さんにはお世話になっていますし、球場も名前をつけていただいている。やっと試合が実現して一安心」と試合開催を喜んだ。米田陽介社長(38)は「震災を経験した球団として、これからも野球観戦の機会の提供や、野球を通じた地域活動を継続していきたい」と話した。

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