救世主が鳴尾浜にいた!? 阪神ドラフト4位の前川右京外野手(19)が、ウエスタン・リーグのオリックス戦で逆方向にぶち込む驚きのプロ1号2ランを放ち、2軍の13連勝に一役買った。1軍は貧打が深刻で、福岡で今季15度目の0封負けを喫し、再び自力優勝が消滅。6月は6連勝後、2戦連続無得点と浮き沈みが激しい。起爆剤もほしい状況で、矢野監督も認める高校通算37発を誇るスラッガーの大抜てきが期待される。

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近い将来の虎に、希望をともすアーチだ。1点リードの4回。左打席にどっしり構えた前川は、右腕中村の137キロを強振。ふわっと上がった打球は失速せず、そのまま鳴尾浜球場の左翼フェンスを越えた。衝撃のプロ1号2ラン。逆方向に押し込んだ怪力に、阪神ベンチもどよめいた。

代打出場した前日8日はヒットを打てず悔しがったが、日刊スポーツの記者に「明日打つので、(新聞で)デカく載せてください!」と予告。言葉通りの大活躍で13連勝に貢献し、本当に1面を飾った。

智弁学園(奈良)で昨夏、甲子園準Vに導いた高校37発のスラッガー。「当時は引っ張っての本塁打ばかりだったので、プロ1号が左方向でよかった。芯は芯だったけど、フェンスギリギリで捕られるかなって感じだった。風に感謝したいです」。だが実際、追い風ではなかった。計り知れないパワーを見せつけた。

上半身のコンディション不良で、3月29日を最後に試合から離れた。2カ月間も別メニューに明け暮れ、7日に代打で実戦復帰してこの日が初スタメンだった。前日までは力んで2打数ノーヒット。だが、軸がブレていたフォームを修正。構えた際のグリップ位置も下げ、脱力をテーマにアーチをかけた。1打席目は追い込まれたが、変化球を拾って痛烈なライナー性の中前打。硬軟織り交ぜたマルチ安打で魅せた。

1軍デビューした3月オープン戦の巨人戦で、1974年(昭49)の掛布雅之以来48年ぶりの高卒新人マルチ安打をマーク。矢野監督は「たまたま打った感じではない。そういうレベルにある」とうなっていたが、故障が癒えたことで再び非凡なセンスが芽吹いた。

1軍は貧打が深刻だ。福岡でのソフトバンク戦は、今季15度目の0封負けで自力Vが再消滅。6月は6連勝したかと思えば、2戦連続無得点と、再び下降モード。最下位からの大逆襲へ、交流戦明けの秘密兵器として、ずば抜けたポテンシャルを持つ若きスラッガーにかかる期待は大きい。

前川は「今日は今日で終わったこと。気合を入れてもっと頑張ります」と引き締めた。今度は1軍で、大山や佐藤輝らとの新大砲トリオで、連日1面を飾る大活躍が見たい。【柏原誠】

◆前川右京(まえがわ・うきょう)2003年(平15)5月18日生まれ、三重県出身。外野手。智弁学園では1年夏、3年春夏と甲子園に出場し、3年夏は準優勝。高校通算37本塁打。21年ドラフト4位で阪神入り。今季ウエスタン・リーグでは、7試合に出場。21打数3安打、1本塁打、2打点、打率1割4分3厘。176センチ、88キロ。左投げ左打ち。

○…先発秋山は5回7安打2失点だった。5月中旬の再降格後は2戦連続で7回無失点。3試合目で連続無失点は途切れたが、粘りは見せた。今季の不調の原因にもなっている右膝の状態を確かめながらの投球。「右膝の体力が多少は続くようになったのかなと思います。1つ段階が上がったかなと。早く1軍の戦力になりたい。根気よく頑張ります」と光は見えているようだ。

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