西武山川穂高内野手(30)が両リーグ最速で20号に到達した。3回無死一塁。広島アンダーソンから、打った瞬間に分かる完璧な1発を左翼スタンドへ放り込んだ。前日11日に規定打席に到達したばかり。出場49試合目、194打席目という驚異のペースで、6年連続の20号にたどり着いた。チームも今季最多の11得点&完封リレーで快勝し、単独3位に浮上した。

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見逃すわけがない。147キロ直球が真ん中高めに吸い込まれてきた。四球後の初球に来た絶好球。山川は完璧に捉えた。強烈な破壊音を残した白球の行方を、悠然と目で追った。ゆっくり歩を進める。打球は左翼スタンドの中段に消えた。

20号は両リーグ最速。右もも裏肉離れで14試合欠場しているのに。「うれしいです。ホームランは減らないですから」と喜んだ。20号は6年連続でもあった。

スラッガーの美学がある。前日に規定打席にも乗って、打率3割5厘はリーグ3位。ただ「早く3割を切りたいぐらい」と笑う。単に安打を嫌うわけではない。3割という基準の前後で打率が推移すれば、「意識してしまう」。それは全打席、全球を1発狙いの理想的なスイングを崩す要因にも変わる。試合中はデータが表示される電光掲示板も見たくない。「だって3割を打てるわけがない。引っ張ってばかりの人が」。その“諦め”の境地が、本塁打率「8・35」の圧倒的な数字の下地にある。

「僕は5打数5安打より、5打数1安打1ホーマーの方が絶対いい」とも言う。本塁打だけでなく、3つの三振も喫したが、「全然いいんじゃないですか」と納得できる。己の形を貫いた結果だと胸を張れる。

試合直前には巨大な雷の音が響き、ゲリラ豪雨がベルーナドームを襲った。球場内が「暗いな」とも感じたが、後に晴れた。「明るくなってくれたので、それはよかった」。1打席目と違い、太陽光が差し込んだ2打席目。見事に雨上がりの虹のような、きれいな放物線を描いた。「1回休んで、もう1回(体の)キレを出したい」。交流戦後もアーチを放ち続ける。【上田悠太】

▼山川が両リーグ20号一番乗り。山川の両リーグ最速20号は18、19年に次いで自身3度目。両リーグ20号一番乗りの回数は王(巨人)の8度が最多で、3度以上は松井(巨人=97、98、00年)以来5人目。パ・リーグの選手で3度は、中西(西鉄=53~55年)と野村(南海=57、61、62年)に並んで最多回数となった。

▽西武エンス(7回3安打無失点で4勝目)「野手の方が多くの点を取ってくれて、楽に自分のピッチングができた。1人1人の打者を打ち取っていくんだと言い聞かせながら投げていった。全ての球種が思うように投げられた」

○…投打ががっちりかみ合った。今季最多の11得点に完封リレー。快勝で、交流戦を9勝9敗の勝率5割で終えられた。辻監督は「今日(12日)勝つと負けるのでは気分的に違う。投手が頑張って、野手も頑張って、理想的な試合だった」とうなずいた。川越、若林、平沼ら新戦力の活躍も今後の手応えで「競争意識が高まり、レベルが上がっていけばいい」と話した。

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