令和初の「3冠王」となるだろうか。DeNA牧秀悟選手(24)は現在、打率3割9厘(リーグ2位)48打点(同2位)16本塁打(同3位)と打撃3部門で3位以内にランクインする。

その卓越した打撃技術の土台にある意識とは-。同い年の阪神佐藤輝への対抗心、そして「3冠王」への思いなどを明かしたインタビューを、前後編の2回でお届けする。【取材・構成=久保賢吾】

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牧はなぜ、プロ2年目でこの成績を残せているのか。他球団の主力選手からは「軸がブレない、壁が崩れない、穴がない」と3つの「ない」を指摘される中、本人は軸と下半身の安定を打撃のポイントに挙げた。

牧 自分は軸(右足)で回るタイプの打者だと思っています。その中で大事なのはタイミングと下半身のため。下半身が崩れたらダメかなと思っています。

今の打撃フォームに固まったのは、中大3年の頃だった。試行錯誤する中で参考にしたのは、同じ右投げ右打ちの球界を代表する打者たちだった。

牧 坂本勇人さん(巨人)とか、鈴木誠也さん(カブス)のフォームをよく見ていて、インパクトの時に右足でためたものを、しっかり伝えられるように、というのは意識しています。

元西武、中日で日刊スポーツ評論家の和田一浩氏は、内角球を左肘を抜きながら打つなど、両肘を柔らかく使える点を天性の資質と絶賛。体の中でボールを捉えられている点も指摘した。

牧 基本、ミートするのは得意な方だと思うんですけど、肘を抜いたりするのはあまり意識したことはないです。でも、フォームが固まった時から、左手の使い方はものすごく意識するようにはなりました。利き手じゃないので、どうしても弱くなってしまうので。

他の打者と比べて、ボールを打つポイントが近いように見えるが、牧の意識も同様だった。

牧 ギリギリまで引きつけて打つようにはしています。どちらかといったら、率を残したいですし、ホームランバッターでは本当にないので、追い込まれても、自分のポイントで打てるようにしたいです。

牧は常々、自身を「ホームランバッターではないです」と言う。本塁打を狙いにいくことも「ないです。僕の中では今はヒットの延長がホームランという意識」と強調する。それでも、今季は出場52試合で16本塁打。この理由はどこにあると考えているのか。

牧 甘い球をしっかりとらえられているのかなと思います。インコースとか、去年よりもすごく厳しい攻めが多かったりするんですけど、その中で今年は四球も多い(ここまで21。昨季はシーズンで27)ですし、追い込まれてからも粘れて、ヒットを打ったりできているのかなと思います。

他球団の選手、スコアラーが声をそろえるのは「甘い球は確実に1球でとらえる」というミスショットの少なさだった。警戒される中でも軸がぶれず、壁が崩れず、再現性の高いフォームだから、本塁打、打率ともにハイレベルの数字を残せている。(後編につづく)

◆牧秀悟(まき・しゅうご)1998年(平10)4月21日、長野県中野市生まれ。松本第一では甲子園出場なし。中大では3年春に首位打者、同秋にMVP。ベストナイン4度。20年ドラフト2位でDeNA入団。21年は8月25日阪神戦で新人史上初のサイクル安打。シーズンでは新人史上4人目の「打率3割、20本塁打」をクリア。今季推定年俸7000万円。178センチ、93キロ。右投げ右打ち。

○…牧は15日、2日連続雨天のため室内練習場で打ち込んだ。交流戦では本塁打は2位タイの6本マーク。一方でロッテとの最終戦では、2点を追う8回1死満塁の絶好機、カウント3-0から振ったが、投ゴロによる併殺打に終わった。「すごい悔しかった。初めて寝るときに思い出すくらい」と明かし、「振りにいけたことはすごく自信持っていけたし、結果があれだったのでこれから生かしたい」と次を見据えた。